午前4時、日本へ帰国する大学時代の先輩を見送るために、バンコク・ドーンムアング国際空港の出発ロビーにいたところ、エーンと同じタンマサート大学に通っているアップルが、税関職員として空港で勤務している母親とともに現れた。このとき一緒にいた家出人のエーンは、アップルの母親の姿を認めるや否や、ものすごい勢いでその場から逃げ出した。
アップルの母親は、娘の所在についてエーンの母親から相談を持ちかけられていると話していた。
エーンは、アップルの母親が出国ロビーから立ち去って、職場へ戻ったことを確認したのちに戻ってきた。そして、先輩が空港の出国ゲートをくぐるのを見届けてから、アップルとエーンの3人でタクシー乗り場へ直行し、朝の通勤ラッシュで混雑している道路をトロトロと走っているタクシーの助手席に身体を深く沈めてぐっすりと眠った。
昨晩は睡眠の時間がほとんどとれなかったため、ペッブリー18街路にある住まい Venezia Residence 6階の自室に戻ってきてからも、室内に2台あるベッドのひとつに横になって、さらに睡眠を続けた。
午前10時頃、10日前の11月7日に日本からの輸送をヤマト運輸に依頼していた別送品がようやく届いた。ダンボールのなかには、デスクトップパソコン、パソコン周辺機器、炊飯器、ビデオデッキなどの電気製品をはじめ、書籍や衣類などが入っていた。ところが、勉強机の脇にパソコンを設置して電源のスイッチを押してみたところ、なぜかパソコンが起動しなかった。
タイにあるヤマト運輸の現地法人、Yamato Unyu (Thailand) Co., Ltd. に電話をかけて問い合わせてみたところ、輸送途中に発生したハードディスクの破損が原因と考えられ、パソコンを修理するのにかかる費用は全額輸送保険によって補償されると回答があった。もともと貨物の到着が遅いことに腹を立てていたが、地理不案内で勝手が分からないバンコクで自力でパソコンを修理しないといけないとを知らされて、いよいよキレそうになった。
やむなく、睡眠不足でフラフラな状態のまま、住まいから700メートルのところにあるパンティッププラザへエーンと出かけ、パソコンショップでハードディスクを購入した。帰宅後、買ってきたばかりのハードディスクを取り付けようと、デスクトップパソコンのケースを開いてみたところ、ケースのなかにさまざまなパーツ類が散乱していた。自力で修復しようと試みたが、CPUとCPUを冷却するためのファンを固定するツメの部分が破損していたため、まったく手の施しようがなかった。
輸送途中に誰かが段ボール箱を放り投げたか、もしくは段ボールを載せた航空機が空港の滑走路に墜落するかのような勢いでハードランディングしたかのいずれかだろうと決めつけて、エーンからヤマト運輸を罵るときのタイ語を教わった。
บริษัทยามาโต๊ะอุนยูไปตายซะ(ボリサット・ヤーマートー・ウンユ・パイターイサ:ヤマト運輸よ、死んでしまえ)