午後、高架電車サヤーム駅前のサヤームセンターにある日本料理屋の8番ラーメンで、タンマサート大学に通っているいつもの友人たちと昼食をとった。この店は、屋台料理の2倍程度と安く、ラーメンの値段も55バーツぐらいで、タイ人の若者たちが気軽に入って日本風の料理を楽しめるようになっている。チャーハンにはタイ米が使われていて、日本米が使われているメニューはひとつもなかった。
食後にワールドトレードセンターの6階にある紀伊國屋書店へ行って、全部で44文字あるゴーガイと呼ばれているタイ語の子音字が書いてある学習用のポスターを探してみたところ、同じアパートに住んでいる日本人留学生の部屋で見かけた高子音・中子音・低子音の3種類が色分けされている物は見つからなかった。
そこで、タイ文字の学習用ポスターの購入はあきらめて、バスの路線図を買って帰宅した。バンコクでタクシーに乗ったところで、せいぜい日本の公共交通機関と同じぐらいの料金しかかからないが、それでも家賃と授業料をのぞいた食費や交通費などにかかる生活費として月々10,000バーツしか用意していないので、節約は常に心がけておきたい。
ちなみに、住まいがあるペッブリー18街路から日本大使館の領事部があるアソークモントリー通り(スクンウィット21街路)までの約7キロを移動する場合、冷房がない路線バスの運賃は5バーツ(13円)なので、タクシーの55バーツ(148円)に対して出費を10分の1以下に抑えることができる。
ペッブリー18街路にある住まい Venezia Residence 6階の自室へ戻って、アップルとシェーンのふたりとくつろいでいたところ、家出人のエーンがドカドカと荒れている様子でやってきた。部屋の扉をバタンと閉めて、荷物を自分に割り当てられているベッドの上へ乱暴に放り投げ、買い物袋の中から唐突にハイネケンビールの350ミリリットル缶(38バーツ)を取り出して、なかば強制的に飲むように勧めてきた。
エーンは、キレてるという以外に形容のしようがない様子で、パソコンのウインドウズXPに標準でインストールされている3Dピンボールというゲームに没頭していた。アップルとシェーンのふたりと目配せをしながら、特に本人に事情を聞くこともせず、エーンの奇行を観察していた。
しばらく経って、部屋のすぐ外にあるエレベーターホールまでアップルを呼び出して、エーンがいま抱えている問題について尋ねてみた。アップルによると、エーンの母親は子供の頃に失踪し、父親も数年前に交通事故で亡くなっている。当時はまだ中学生だったため、バンコクの郊外にある家庭に養子として引き取られたが、継父や継母、義理の兄弟たちとは上手くいっていないようで、嫌がらせを受けている兆候があるという。みんなでパッタヤーへ旅行に出かけた11月10日以来、どうやら家には帰っていないようで、それ以上のことを聞けるような雰囲気ではなかったし、本人からの説明もないため分からないと話していた。
アップルとシェーンのふたりは、キレているうえ泥酔までしているエーンを30分ぐらいかけて寝かしつけてから、きょうはエーンを泊めてあげてと言って帰って行った。