タバコをポイ捨てしたら2,000バーツ要求された (初級2-4)

ヂュラーロンゴーン大学文学部が開講している外国人のための集中タイ語講座、インテンシブタイ・プログラム29日目のきょうは、タイ文字の低子音字23文字のほか、タイ語における比較の表現について学習した。タイ文字の子音字については、この4日間で44文字すべてが終了したことになる。

最近になって、タイ語の「です・ます」にあたる ครับ(クラップ)を文末に付けて話してもコーヒーカップを連想することがなくなり、徐々にではあるが、タイ語に慣れつつあると実感している。

夕方、高架電車のサヤーム駅前を歩いていたときに、タバコの吸い殻をポイ捨てしたところ、付近で警戒にあたっていた制服警官に見つかって呼び止められた。バンコクでは、道路上にゴミを捨てることが衛生維持法によって禁止されており、違反者には2,000バーツ以下の罰金が科せられることになっている。

「は~い、国民 ID 見せて~」

制服警官は、さっき僕が捨てたばかりのタバコを拾い上げて、タイ語で「あなたはこれを捨てましたね~?」と言いながら近づいてきた。財布のなかにある2,000バーツが、いま、危険にさらされている。

Sorry. I don’t speak in Thai(すいません、私はタイ語が話せません)

この程度のタイ語会話なら難なくこなせるはずだが、日本の企業から派遣されてタイへ来ている駐在員の配偶者から教わった、警察官と話すときにはどんなことがあってもタイ語を使ってはならないというタイ赴任講座の基本を思い出して、やむを得ず、ぎこちない英語で応じることにした。

すると、制服警官も英語に切り替えて「あなたは2,000バーツの罰金だ。パスポートを見せなさい。私に同行するように」と言って詰め寄ってきた。これはマズいと思い、とりあえず「知りませんでした~」作戦に出ることにした。

「タイの国内でパスポートを携帯して歩くのは、盗難のリスクがあって大変危険だと聞いています。ですからパスポートはホテルに置いてあります」

「ええっとぉ、それじゃ・・・・・・あなたは留学生か?」

(留学生がホテルに泊まっているわけがないだろう。この制服警官はいったい何を考えているのか?)

「いいえ、私は観光客です。ですから私はタイの法律を犯したのかもしれませんが、知らなかったのです。申し訳ありません。これから Siam Discovery Center へ行くところなんです」

普段であれば、商業施設のサヤームディスカバリーセンターをタイ語で言い表すときには、タイ語風に語尾を上げて สยามดิสคัฟเวอรี่เซ็นเตอร์(サヤーム・ディッス・カッフ・ウェーリー・セントァー)と発音するところだが、いま自分はタイ語を知らない外国人観光客という設定になっているため、英語の正しいイントネーションを頭に思い浮かべながら発音した。

「この法令違反は2,000バーツの罰金だ。あなたはいくら払うつもりなのか?」

やはり来たか。これは「罰金を減額してやるから、その代わりに賄賂をよこせ」という、タイの警察官特有の合図だ。しかし、ここで「はい、そうですか」と言って金をくれてやったら、エーンに渡す予定になっているバレンタインデーのプレゼントが買えなくなってしまう。

「私はあなたに200バーツを支払う用意があります。大変申し訳ありませんが、私はこれからタクシーに乗ってホテルへ戻り、きょうの分の宿泊費を支払わないといけないのです。ですから、200バーツ以上の金額はお支払いできません」

「タバコのポイ捨ては2,000バーツ!それでいくら払うつもりなのか?」

この警官の英語は本当にひどい。中学校の一年生でも文法の誤りがあるとすぐに分かるような英語を連発してくる。たとえば、”What’s you come to Thailand?” という質問を繰り返しされたが、おそらく “How long will you stay in Thailand?” 、もしくは “Why are you staying in Thailand?” のいずれかを聞きたかったのだろう。そのたびに「分からなかったんで、もう一度言っていただけませんか?」、「あと何分で警察署に到着するのですか? 警察署に日本語を話す人はいますか?」と応じて、会話が成立しないよう意図的に仕向けていった。

そんな押し問答を10分間も続けているうちに、制服警官は諦めたのか、結局1バーツも取られることなく、無事に解放された。

その後、サヤームディスカバリーセンターのアクセサリー売場へ行って、お手頃価格の可愛らしい指輪を見つけた。エーンの指は平均的な日本人女性よりかなり細いはずだ。サイズが合わない指輪を買っても仕方ない。開店休業状態にあるエーンのアルバイト先へ行って指のサイズを聞いてみたところ、知らないと言うので、店まで付いてきてもらって990バーツの指輪を購入した。

夜、タバコのポイ捨ての件をエーンに話してみたところ、「路上にゴミを捨てたときの最高刑が2000バーツなのだから、冷蔵庫や洗濯機のような巨大なものを投棄したわけでもないのだし、タバコの吸い殻一本だけで、そんな高額な量刑になるわけないでしょう。やっぱり、タイの警官は信用できない」と話していた。

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ABOUTこの記事をかいた人

バンコク留学生日記の筆者。タイ国立チュラロンコーン大学文学部のタイ語集中講座、インテンシブタイ・プログラムを修了(2003年)。同大学の大学院で東南アジア学を専攻。文学修士(2006年)。現在は機械メーカーで労働組合の執行委員長を務めるかたわら、海外拠点向けの輸出貿易を担当。