ヂュラーロンゴーン大学文学部が開講している外国人のための集中タイ語講座、インテンシブタイ・プログラム33回目のきょうは、きのうに引き続きタイ語における気持ちの表現方法について学んでから、過去に発音記号で教わった単語をタイ文字で表記する練習をした。
ここ数日、気分が沈んでいて、なかなかテンションが上がらない。
午後4時ごろ、大学からの帰りに、ワールドトレードセンターの6階にある日本料理店の鎌倉山へ寄って、早めの夕食をとっていたところ、いつもは客がひとりもいないこの時間にしては珍しく、10人からなる団体客がやってきた。日本人男性の5人組は、服装から一発で売春婦と分かるタイ人の女性をそれぞれひとりずつ連れており、店で働いているタイ人の店員に対する態度も非礼を極めていた。あたかも個人で所有している奴隷や使用人に対して指示を出しているかのようで、店員は見るからに不快そうにしていた。
日本人のセックスツーリスト(買春旅行者)たちには、現地の売春婦に限らず、すべての現地人を無条件に見下すといった共通した特徴がある。相手を見下す根拠としては、日本人とタイ人のあいだにある所得の格差が理由として考えられる。
ところが、なんとも皮肉なことに、日本人の旅行者を相手にビジネスをしているタイ人に限って言えば、バンコクへ旅行にやって来ている日本人男性やバンコク在住の日本人男性より多くの収入を得ていることがしばしばある。
たとえば、外国人の男性を相手に商売をしているタイ人の売春婦には、個人によって差はあるが、1日あたり1,000バーツから5,000バーツの収入があるため、売春婦としての適性がそこそこあって、まじめに仕事をこなしていれば、月々81,000円から405,000円は得られる計算になる。日本語を操るこの店の店員も、おそらく54,000円ぐらいの月給はもらっているだろう。しかも、タイの物価は日本の15%程度と安いので、一般的な日本人と比較したときの可処分所得が平均的な日本人を上回っていたとしても決して不思議ではない。
日本人の男性客たちが交わしていた会話の内容から想像すると、彼らは仕事つながりの人たちといっしょにタイへ遊びに来ているようだった。
しかし、日本の大学生が春休みを利用して一斉に海外へ旅行に出ているこの時期は、日本国内の空港を発着する国際線にほとんど空きがないため、会社単位の規模でツアー旅行を設定するのはまず不可能だし、平日に海外旅行の日程を組める会社も非常に限られているので、ふつうに考えれば、ごく小規模な会社に勤務している比較的所得が少ない会社員か、もしくは個人事業主が自主的に休暇をとってタイへ旅行に来ている、ということになる。
そもそも、長期の連休をとって海外へ女を買いに来る中年男性に配偶者がいるとは考えにくいし、同時に、それなりの所得がある中年男性に配偶者がいないというのも考えにくい。むしろ、隣に侍らせている売春婦のほうが、所得が高い可能性だって十分ある。
日本の厚生省が2000年におこなった毎月勤労統計調査によると、日本人の給与所得者の平均的な年収は350万円前後(ボーナスがない前提で月給30万円弱)しかないので、生活のゆとりに限って言えば、彼らはおそらく売春婦以下だろう。だから、彼らには、所得の格差を理由にタイ人を見下す権利も資格もないはずだ。そんなことを考えているうちに、ただでさえ悪かった気分がさらに悪くなった。
伊勢丹の5階にある食料品売場で食材や飲み物などを買ってから、バスに乗ってペッブリー18街路にある住まい Venezia Residence へ戻る途中に、もう酒でも飲んでいないとやっていられないといった気分になり、日本人の友人たちに電話をかけまくって今晩いっしょに酒を飲む約束をとりつけ、自室に戻ってからすぐ宿題に取りかかり、太陽が沈む前に終わらせた。アルバイトに出ているエーンには、電話で今晩の帰宅は遅くなると伝えた。
夜、セックスツーリストたちのあいだで売春婦が調達できるバーとして知られている、スクンウィット15街路のルワムヂットプラザホテル地階にあるトァーメー・コーヒーショップと、ペッブリータットマイ通りのサヤームホテルに併設されているコーヒーショップへ出かけ、数人の売春婦たちと他愛もない話をして、ときには関取級の巨大な売春婦を追い払いながら、日本人の友人たちと午前4時まで語り合った。