ヂョーイの誕生日

ヂュラーロンゴーン大学文学部が開講している外国人のための集中タイ語講座、インテンシブタイ・プログラム39回目のきょうは、タイ語における慣用表現について学習した。

インテンシブタイの講師から、タイでは、誕生日を迎える本人がパーティーを主催し、出席者に対して無料で料理を振る舞うという習わしがある、と聞いていた。

午後3時の授業終了後、サヤームディスカバリーセンターの6階にある酸素バーでアルバイトをしているエーンから電話で呼び出されて行ってみると、エーンの幼馴染みでバイト仲間のヂョーイが20歳を迎える誕生日だから、エーンが午前中に買っておいた誕生日プレゼントとバラの花束を密かにバイト先から持ち出して、あとで持ってきて手渡してほしいと頼まれた。

酸素バーから誕生日プレゼント一式を持ち出すことには成功したものの、ペッブリー18街路にある住まい Venezia Residence へ帰る経路上にある細いスィースルット街路を歩いていたところ、いきなりプレゼントもろとも水をかぶってしまった。道路脇にある家の雨樋から落ちてきた水にしては量が多いと思って周囲の様子を確認してみたところ、民家の入り口付近で小さな女の子が右手にプラスチックのコップを持って前傾姿勢を取ったまま硬直していた。いまかぶったのは飲みかけの水だ。キタネー。

午後8時半、同じアパートに住んでいる日本人留学生にプレゼントのバラの花束を持ってもらい、サヤームディスカバリーセンターにある酸素バーへ行って手渡した。プレゼントを受け取ったヂョーイは大喜びをしていたが、すべてはエーンが仕組んだ演出だったので、なんとも後ろめたい気持ちになった。

午後9時、エーンとヂョーイのふたりは酸素バーの店じまいをして、同じアパートに住んでいる日本人留学生を含む4人で、パトゥムワン交差点をはさんでサヤームディスカバリーセンターの斜め向かい側にあるマーブンクローングセンターへ移動し、6階にあるボウリング場へ行ってみたところ、ちょうど金曜日とあってか順番待ちの列ができていたため、バースデーケーキを食べながら時間をつぶした。同じアパートに住んでいる日本人留学生は、ケーキのあまりの甘さに、もしテレビ東京系列で放送されているテレビチャンピオンに出演して食べさせられたら、おそらく3個目ぐらいで吐き出すだろうと話していた。

マーブンクローングセンターのボウリング場は、ボウリングボールがブラックライトに照らされて光って見えるなど、日本国内にある施設と比較しても決して引けを取らない最新の設備を備えていた。エーンは、今回がはじめてのボウリングだったが、なんと79点をはじき出した。あの超細い腕でどうやってコントロールできているのか不思議でならない。1ゲーム目が終わった時点でヂョーイの門限になって解散した。

ヂョーイの日給は9時間働いても200バーツ程度と少ないため、ボウリングの料金については、タイの風習を無視するかたちで、僕たちが全額を出してあげた。それと、プレゼントに怪しい水がたっぷりとかかってしまったことについては最後まで秘密にしておいた。

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バンコク留学生日記の筆者。タイ国立チュラロンコーン大学文学部のタイ語集中講座、インテンシブタイ・プログラムを修了(2003年)。同大学の大学院で東南アジア学を専攻。文学修士(2006年)。現在は機械メーカーで労働組合の執行委員長を務めるかたわら、海外拠点向けの輸出貿易を担当。