夜、スクンウィット4街路にある複合風俗施設 Nana Entertainment Plaza へバンコク滞在中の高校時代の友人と出かけてから、ヂャーオプラヤー川沿いにあるホテル Royal Orchid Sheraton に滞在しているもうひとりの高校時代の友人をたずねた。
このホテルは、性風俗愛好者のあいだでは娼婦売春婦の連れ込みが困難であることでも知られており、あらゆる意味でガードが堅い。
レセプションで宿泊中の友人に取り次いで欲しいと丁寧なタイ語で依頼したところ身分証明書の提示を求められた。パスポートを携帯していなかったため、仕方なく運転免許証を提示すると「あなたの名前は宿泊者の同伴者として登録されておりません」と突っ返された。内線電話で確認するのも断られた。
このホテルは宿泊者を友人がたずねるのも禁じているのか!!僕が Go Go Boys のタイ人店員なら断るのも分かるが、日本人が日本人の友人をたずねるのの何がおかしい!?イライラを募らせていたところ、「ごめんねぇ~。保安上の理由で訪問者の素性をチェックするのもあたしたちのお仕事なのよぉ~」とタメ語で話しかけられた。ご託を並べる前に内線電話を一本入れるだけで済む話じゃないか!!
やむなく、ペッブリー11街路にあるホテル First に宿泊している別の友人のパスポートを提示すると、「確認できました。あなたの名前は『同伴宿泊者名簿』に記載があります」と言われ、ようやくもうひとりの高校時代の友達が泊まっているジュニアスイート「スコータイの間」へレセプションの監視付きで行くことができた。
このメンバーで再会するのは高校2年生以来、約7年ぶりのことだった。ひととおりの挨拶を済ませると、すぐにレセプションでの不快な出来事を友人に話した。
友人は「これは抗議するべきでしょう」と席を立って、抗議のためにレセプションへ乗り込んだ。
この友人は、世界中にある Sheraton Hotels 系列のホテルを定宿としていて、上得意客の特典である「プラチナカード」を持っている。このカードには不思議な力があって、なぜか一番安い部屋を予約してもジュニアスイートにアップグレードされ、一番安い部屋の料金で上級客室宿泊客専用のラウンジで食べ放題・飲み放題のサービスまで利用できるという。
そんなVIP待遇の友人がレセプションで開口一番英語で「この時間帯、このホテルで最大の権限を持っている従業員に対して面会を求める」と言い放った。ホテルの人事責任者が出てきたので説明を求めた。
「このホテルでは宿泊中に来客があっても取り次いでもらえないと理解してよろしいか?」
「このホテルでは宿泊中に訪ねてきた来客が従業員からタメ語で厳重な取り調べを受けることになると理解してよろしいか?」
「このホテルに宿泊するとレセプションによる不適切な対応のせいで来客との人間関係が損なわれるリスクがあると理解してよろしいか?」
「今回のあなた達の不手際によって私の重要なビジネスパートナーに大変な不快感を与えてしまった。これに対して○○さん、あなたは自説を繰り返しているばかりで反省の色がまるで見られない。私があなた方のホテル本部へ苦情のレターを送るその前に、なにか提案しておきたいことはないか?」
この言葉を聞いて、人事責任者は初めて襟を正し、これ以上にないという丁寧なタイ語で謝罪を述べた。
タイには自らの非を認めない文化がある。しかも言い訳ばかり並べて自己を正当化するオマケまで付いてくる。
今回の事件を振り返って、友人は「英語で取り次ぎを頼むべきだったね。タイ語では軽く見られるようだ」と話していた。
タイにおける英語の威力について、友人は少なくとも僕より正しく理解していた。