ミスタイランドの舞台裏

「いますぐテレビをつけて3チャンネルを見て!」

午後8時ごろ、ペッブリー18街路にあるアパートでウェブサイトの更新作業をしていたところ、外出中のエーンから電話があった。そのまま作業を続けたが、テレビだけは一応つけておいた。

ここのところ、エーンはラームカムヘーング大学のダンスサークルが斡旋しているバイトに行っている。先月は飴菓子「ボタンプラス」、来週は洗剤「アタック」の街頭宣伝だった。ラングスィットにあるショッピングモール Future Park でバックダンサーのバイトをしたときの写真はアメリカCNNのウェブサイトに掲載されている。

午後10時、エーンが帰宅した。きょうはCentral百貨店ラートプラーオ店で催された「ミスタイランド選考会」へ行って、ラームカムヘーング大の大学院生の化粧や衣装を手伝ったという(日給300バーツ)。

「エントリーナンバー○○番の有名タレントだけど、まだ若いのにバストが垂れてて乳輪がものすごく大きかった。自分専用の個室がないのに激怒してコンテストの主催者相手に大声でわめき散らしてた。ほかの参加者たちは『不満なら帰れば?どうせアンタじゃ入賞できないから』って本人に聞こえるように話してた。ミスタイランドの出場者は大部屋で支度することになっているから、自分だけ個室なんてワガママが通るはずないのに。それにしてもカワイイ系タレントの『醜いバストの秘密』を目撃できたなんて役得よね~!」

ミスタイランドの有力候補者はティアラを載せられるように髪をあげているから事前にある程度予想できるという。ところが今回は髪をあげていなかったノーマークの孤児が選ばれたためティアラを載せるのに苦労していた。

「孤児ってゆう理由だけで選ばれたんじゃない?この顔、どう見たってタイ人じゃなくて中国人よ!ミスタイランドはいつから『ミスチャイニーズ』になったのかしらね」

ミスタイランドの控え室では、ドレスの色合いやスリットの長さなど、つまらない理由で泣き叫ぶ声があちこちから聞こえたという。

ABOUTこの記事をかいた人

バンコク留学生日記の筆者。タイ国立チュラロンコーン大学文学部のタイ語集中講座、インテンシブタイ・プログラムを修了(2003年)。同大学の大学院で東南アジア学を専攻。文学修士(2006年)。現在は機械メーカーで労働組合の執行委員長を務めるかたわら、海外拠点向けの輸出貿易を担当。