エーンは王宮方面へ引っ越すと偽ってフワイクワーング区のスーンウィヂャイ8街路にあるコンドミニアム「プライトンプレイス」へ引っ越していった。
エーンの荷物は、プラスチックの収納箱1つと国内旅行用のカバン1つ、それからリュックサック1つに納まった。この部屋に住んでいた14ヶ月間、エーンは生活消費財を充実させていったが耐久消費財は何一つ買わなかった。
一方、僕が来月下旬に予定している引っ越しはかなり大掛かりになる。この部屋には一人暮らしの日本人大学生と同程度の家財道具がある。①テレビ、ミニコンポ、冷蔵庫、電子レンジ、全自動洗濯機は友人の会社に預け、②このホームページを更新するのに使っているデスクトップパソコンはコンドミニアムに住んでいる別の友人に預け、③それ以外の小物類はプラスチックの収納箱に詰め込んでさらに別の友人宅に預け、④机や本棚は処分することになっている。エーンは荷物を預かることを断ってきた。きっと何らかの思惑があってのことだろう。
さて、日本に何を持ち帰ってアメリカに何を持って行くべきか。
ペッブリー18街路にあるアパート Venesia Residence の644号室へエーンの10年来の親友であるヂョーイが引っ越しを手伝いにやってきた。エーンの荷物をみんなで1階の駐車場へ運び出してから、ペッブリー通りまでタクシーを呼びに行った。エーンの荷物はタクシー(トヨタコロナ)1台に納まり、さらにあと4人座れるだけのスペースが残った。
エーンが去ってから部屋の掃除を翌24日の午前8時まで続けた。部屋中に散乱していたゴミはアパートのゴミ収集所に収まらないほどの量だった。無造作に置かれていた衣類は畳んで洋服ダンスにしまって、タイルの床を数ヶ月ぶりにホウキとモップで掃除した。
部屋は一晩にして蘇った。整然と片付けられている部屋を見ると奇妙に思えた。そして自分がいま一人暮らしをしていることを思い起こしてシンミリした。これまでは自分がどんなに望んでも一人でいることなんてできなかったけれど、今後は自分がどんなに望んでも毎晩のように繰り返してきたような無駄話ができなくなる。そう思うと寂しさがグッとこみ上げてきた。