夜のパッタヤー

パッタヤーで一番の上客はアメリカ海軍兵らしい。

きょうはバイト先の社員旅行に参加した。業務終了後にタイ人を含むすべての従業員を乗せた乗合バン(ロットゥー)のアクセルをベタ踏みして(時速120キロしか出なかったけれど)、バンコク郊外のビーチリゾートとして知られているパッタヤーまで運転した。

午前零時にタイ人従業員たちが寝静まったのを見計らってから日本人の同僚たちと夜のパッタヤーへ繰り出した。ホテルの周囲にはピンク色の照明が眩しいオープンバーが軒を連ねていた。

「ニーハオ!」

カラオケスナックが立ち並ぶ薄暗い路地を歩いていたところ店の前で呼び込みをしていたホステスの一団から声をかけられた。そのまま「ニーハオ」と返事をしたら「あーあ、こいつらタイ人だよ」という声が聞こえてきた。

「アッリガットーゴザイマス!」

さらにゴーゴーバー(娼婦の裸踊りバー)の前を通り過ぎたところで突然感謝の言葉をいただいた。

「三菱!」

でもさすがに日本語の固有名詞であれば何でもいいというのはオカシイだろう。

バンコクの娼婦たちはかなりの高確率で日本人を正確に見分けることができるけど、パッタヤーの娼婦にはその能力が足りないらしい。一緒にいた経営幹部はこう話していた。

「パットポングをはじめとするバンコクの夜の街はなかば日本人観光客をターゲットに営業しているけれど、どうやらパッタヤーはそうじゃないらしい」

アメリカ海軍の艦船が寄航するとパッタヤーの風俗店は店先に星条旗を掲げて町全体が一気に活気付くという。バンコクの娼婦たちは間抜けな日本人観光客たちをターゲットにしてカネをゲットする機会を虎視眈々と狙っているけれど、ここパッタヤーでそういった雰囲気は感じられなかった。

ABOUTこの記事をかいた人

バンコク留学生日記の筆者。タイ国立チュラロンコーン大学文学部のタイ語集中講座、インテンシブタイ・プログラムを修了(2003年)。同大学の大学院で東南アジア学を専攻。文学修士(2006年)。現在は機械メーカーで労働組合の執行委員長を務めるかたわら、海外拠点向けの輸出貿易を担当。