責任は半分ずつ

これまでエーンには潜在的な不信感を抱き続けてきたけれど、今回は初歩的なミスコミュニケーションと意地の張り合いによってもう後戻りできないところまで来てしまった。

昼過ぎにプララームスィー通り(ラーマ4世通り)とサートーンヌア通りの交差点にあるレンタカー屋でピックアップトラック(1日1,200バーツ)を借りてから、一旦ペッブリー18街路にあるアパート Venezia Residence まで戻ってきた。

当初、友人の会社に保管を依頼することになっている家財道具一式を部屋からピックアップトラックまで警備員に運んでもらってからバイトへ行くついでに輸送する計画になっていたけれど、バイト先へ出かける時間になっても荷物を整理が終わらなかったため警備員に「また夜にお呼びします」と言って荷物の搬出を一旦先送りした。そのときはまだ不用品の取り扱いについて何も決めていなかった。

エーンとヂョーイは僕と警備員のやりとりを聞いて「今晩中に保管品の搬出が完了する」と理解したようで、あす丸一日かけて不要となった家財道具をエーンの友人たちに配る計画を立ててそれを電話で触れて回ったらしい。

しかし僕の友人たちに保管を依頼することになっている家財道具をすべて今晩中に運び出すのは到底不可能だったし、不用品をエーンの友人たちに譲渡すると勝手に決められても困る。だからバイト先からエーンに電話をかけてエーンの計画を却下すると伝えたところ45分間にわたる罵詈雑言の応酬となり、電話を切ったあとにメールが送られてきた。

「あなたが全責任の半分を取るのなら、わたしはあなたを許すだろう」

意味不明だ。レンタカーはあすの午後5時までに返却しなければならない。エーンが勝手に立てた計画どおりに行動したら、不用品をエーンの友人たちに配って回ることはできるけど、肝心の保管すべき荷物を運ぶ時間がなくなってしまう。そんな馬鹿げた計画を実行しなければならない義務と責任が僕にあったというのか!?

全責任がエーンにあるような問題でも、これまでは効率よくタイ語を勉強するために文句の一つも言わず責任の一部をかぶってきた。無茶な要求をするのは平等な男女関係を築くためのエーンなりのやり方かもしれないけれど、ヂュラーロンゴーン大学の集中タイ語講座を終えたいまとなっては無理してこんなバカげた要求に応じてやる必要もない。

不当な謝罪要求に対していつものように応じることで問題の収拾を図るべきなのか、それともタイにおける人間関係を抜本的に見直す好機としてこれを最大限活用するべきなのか。

ABOUTこの記事をかいた人

バンコク留学生日記の筆者。タイ国立チュラロンコーン大学文学部のタイ語集中講座、インテンシブタイ・プログラムを修了(2003年)。同大学の大学院で東南アジア学を専攻。文学修士(2006年)。現在は機械メーカーで労働組合の執行委員長を務めるかたわら、海外拠点向けの輸出貿易を担当。