はじめての英語プレゼンテーション 後編

徒労感だけが残るプレゼンテーションだった。

午前中の「東南アジア研究の方法論」ではタイの政治と国軍の関係についての講義を受けた。講義の構成と講師の英文法がメチャクチャなことになっていた。そして午後の講義「近代東南アジアの植民地主義・民族主義と民主化」で数日前から準備してきたプレゼンテーションを発表した。

プレゼンテーションは、1グループ10分と決められていた。だから時間内で終わらせるために簡単な内容にしておいたけど、ほかの学生は何十分も話し続けていた。僕が講師の英語を聞き間違えたのか、それともほかの学生が制限時間に無頓着なだけだったのか。

課題は「東南アジア圏内の任意の国の国民意識の特徴について」だった。特にフィリピン人の学生からは、第2次大戦時の日本の占領政策について25分間に渡って口汚く罵られた。この学生によると、今日のフィリピンにおける貧困問題は全部日本のせいだという。近くの席に座っていたタイ人やカンボジア人からは、何度も同情のサインが送られてきた。

そのとき僕にできたのは沈黙だけだった。

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バンコク留学生日記の筆者。タイ国立チュラロンコーン大学文学部のタイ語集中講座、インテンシブタイ・プログラムを修了(2003年)。同大学の大学院で東南アジア学を専攻。文学修士(2006年)。現在は機械メーカーで労働組合の執行委員長を務めるかたわら、海外拠点向けの輸出貿易を担当。