日本とタイとカンボジアの経済格差は、GDP比で1317:39:1、ひとりあたりGDP比で120:11:1であり、カンボジアの経済力は近隣の東南アジア諸国に対して著しく劣っている。カンボジア側の街ポーイペートは、カンボジア入管のタイ側にあるカジノを除けば特に見るべき場所もない。
しかし、タイ入管とカンボジア入管の中間地点にあるカジノ街だけは、先進国にあっても見劣りしないほど立派な施設が立ち並んでおり、ラスベガスのストリップ通り沿いには遠く及ばないものの、ダウンタウン・ラスベガスよりはゴージャスな印象がある。
高校時代の友人と滞在しているカジノホテル「ホリデーパレス」は、ガラス張りの室内庭園を中心にコの字型の形状をしており、北棟にフロント、賭場、日本料理屋、中華料理屋などの主要機能、南棟に客室や商店などが配置されている。
客室内は清浄に保たれており、一般のホテルにありそうなものはすべて揃っている。ただし、電話の外線発信ができないため、 GSM形式の携帯電話を持ち込んで使うしかない。宿泊費は、平日が1,000バーツ、週末が1,200バーツ。
カジノの賭場は独特な雰囲気を放っていた。スロットマシーンの台数は少なく、プレイしている客もおらず、効果音も聞こえなかった。カジノ客はすべてタイ人で、施設内の表示もすべてタイ語で英語の併記がない箇所もあった。バカラやポーカーのテーブルに人気が集中しており、ブラックジャックに興味を示す客はほとんどいない。テーブルのディーラーに現金をチップに交換する権限がないため、いちいち換金所まで行ってチップを購入する必要があった。ラスベガスではチップで生計を立てていると言われているカクテルレディーはいないが、タダで酒と飯が楽しめる。ただし、ビールはハイネケンとカンボジア産ビールの2種類しかなく、ウイスキーもジョニーウォーカーの赤と黒の2種類でカクテルはなかった。
カジノ名物といわれるビュッフェはまったく目も当てられなかった。選べる料理はたったの8種類で、しかもすべてタイ料理で味も学生食堂にも劣るレベルだった。料金は40バーツ。ただし、部屋に泊まったり、ゲームチップを購入すれば無料券がもらえる。
このカジノには、カジノチップを大量に購入(交換)することで宿泊費が無料になるプランがある。平日は15,000バーツ分、週末は2,500バーツ分。ただし、このプランで交換したチップは「プロモーションチップ」と呼ばれる特別なもので換金する時に10%の換金手数料がかかるため、完全に無料で宿泊するためにはプロモーションチップを全部賭けてすべて正規チップに換えていく必要がある。
ポーイペーのカジノホテルは全部で6ヶ所あり、それぞれに特徴がある。一番有利な条件で宿泊できるのはホリデーパレス、一番雰囲気が良いのはダイヤモンドシティー、一番ブラックジャックのルールが良いのはトロピカーナ、一番客が入っているのはホリデーポーイペートまたはトロピカーナ。ダイヤモンドシティーとポーイペートリゾートの従業員は大半がカンボジア人で、タイ語もほとんど通じなかった。
ラスベガスにあるカジノはネバダ州法でさまざまな規制と監督を受けているけれど、ここポーイペートポイペトのカジノはそうではないため、おそらく不正はないだろうが、それでもゲームの公正さには一抹の不安が残る。