「実際の仕事に役立つ専門知識を身につけるためにも、そろそろ将来の方向性を定めておいた方がいいよ」
きょうはその言葉の意味を丸一日かけて学んだ。
数週間前、このウェブサイトを通じて知り合った日本人に、つぎの出張の時に工場を見学させて欲しいと軽い調子でお願いしたところ快く引き受けてくれ、さっそく工場内を案内してもらえることになった。
バンコクの近郊には政策的に設けられた工業団地がたくさんある。タイ国投資奨励委員会 BOI は、それぞれの工業団地周辺の開発状況に応じてゾーン1(発展)、 ゾーン2(開発途上)、 ゾーン3(後発開発途上)の3区域に分類し、開発が遅れている地域に進出した企業に対して税制面での手厚い恩典を与えている。
今回見学させてもらったのは、バンコクの中心部から50kmほど離れているプラナコーンスィーアユッタヤー県にあるハイテック工業団地。タイ国投資奨励委員会の区分ではゾーン2に立地している。国際的に有名な大企業が数多く進出しており、タイが世界に誇るコンピュータパーツの一大生産拠点となっている。工業団地へ向かうクルマの中で、タイに進出している日系製造業の変遷や抱えている問題などについて、いろいろと丁寧に説明してもらった。
この工場はさまざまな産業機械が導入されている先進国顔負けのハイテク工場で、徹底した無人化・省力化が図られていた。これだけ整備が隅々まで行き届いていれば、どんな取引先が見学に来ても胸を張って堂々と内部を見せられるだろう。
生産ラインを眺めながら説明を聞いているうちに、ものすごい不安感にさいなまれた。どんなにタイ語が上手く話せても、どんなにタイに関する知識があっても、業務をこなすための専門知識がなければ何もできない。納入先の担当者が施設の監査にやってきたときに、十分な業務知識がなければ、信頼どころか受注を勝ち取ることもできない。
今回の工場見学でもっとも有益だったのは、実は工場の施設ではなく友人の生き方やポリシーについて聞けたことだが、この日記では割愛する。
将来タイに関わる仕事に就いて生計を立てていくのであれば、やはり製造業への就職も視野に入れておきたい。そういった意味でも、今回の工場見学はとても有意義だった。
ひととおり生産ラインを見て回ってから事務所棟へ移動して、ドラマに出てくるような大掛かりな設備がそろっている会議室で、中堅幹部たちが大きな図面を広げながら現在発生しているトラブルの解決策について話し合っているところにお邪魔した。彼らとデリバリーのピザを食べていたところ、数百億バーツという莫大な資産を持っている経営幹部のタイ人がやってきて、実際に言葉を交わす機会も得た。僕がこの工場を見学するという話は、あらかじめ各部門の管理責任者にも伝わっていたようで、遅滞なく工場見学ができるよう事前にさまざまな手配をしてくれた友人には感謝している。
午後3時には会社の送迎車でフワイクワーングまで戻り、その後セントラル百貨店ピングラーオ店へ行って昨日入手した図書館の蔵書「タイ近代政治史」を読みながら、およそ3ヶ月ぶりにストレートパーマをかけた。夜、バンコク大学に通う友人たちがいるサムットプラーガーン県サムローングの大部屋カラオケ屋へ向かった。