バンコク都知事選を今月の29日に控え、各地では激しい選挙戦が繰り広げられている。
タイの選挙は、選挙カーが街中をくまなく回って候補者の名前を連呼することもなければ、候補者が駅前に立って演説することもないし、選挙管理委員会が街頭にポスターを貼るための掲示板を設けることもない。その代わりに候補者たちは人通りが多いショッピングセンターを回って直筆のサイン入りカードを配ったり、電柱に写真入りの巨大な看板を立てるなどして、自らの存在をさかんにアピールしている。大学の周辺では、つぎの4候補の選挙ポスターをよく見かける。
暮らしやすいバンコクを作ります
1 アピラック・ゴーサヨーティン(民主党)
7つの計画、4つの改革、3つの大綱、6つの急務
3 チャルーム・ユーバムルング警察大尉(無所属)
交通問題やゴミ分別とリサイクルに取り組み、下水道、治水、風紀、食品衛生等のシステムを改善します
5 マーナ・マハースウィラチャイ博士(元下院運輸委員長)
乗り換えても支払いが1回だけ交通システムの整備、郊外駐車施設の整備、陸橋の整備、治水整備、公共輸送網の拡充、地域発展交付金制度、ゴミのリサイクル、廃水処理、月々の主要道路の清掃、植林による空気清浄、クリニックの24時間営業、スポーツ振興、教育振興、野良犬の管理などに取り組みます
7 パウィナー・ホングサグン (下院議員・国家発展党幹事長)
今回の都知事選には、一昨年マスコミを賑わしたことで一躍有名人になったソープ王、チューウィット・ガモンウィスィット氏も出馬している。
チューウィット氏は2003年2月6日、作業員およそ130人を日当500バーツで雇い入れ、買収した軍や警察の高級幹部の指揮の下、スクンウィット10街路にあった「バービア」と呼ばれる娼婦との語らいバーを重機で破壊して撤去した。その合法性についてはさまざまな意見が飛び交い、撤去後の数日間でチューウィット氏のほか、タナテープ陸軍少将をはじめとする軍や警察の高級幹部が次々と逮捕され、連日のように新聞各紙の第一面を賑わせた。
逮捕されたチューウィット氏は、自らが賄賂を定期的に納めてきた警察幹部のイニシャルや特徴などについて意味ありげに言及することによって裏切り者を糾弾するとともに、この事件に対する市民の関心を自分に集中させることで身の安全に努めた。このイニシャル当てクイズは見事、当時バンコク都民たちの話題の中心となり、ブラック系コメディアン(?)として一躍時の人となった。チューウィット氏が経営しているソープランドに対する警察の立ち入り検査は、不起訴処分が確定するまでのあいだ再三再四繰り返された。こうして、ネガティブながらも圧倒的な知名度を得たチューウィット氏は、自らが所有するソープランドをすべて売却することで莫大な選挙資金を調達し、それを原資として新党「タイ始祖党」พรรคต้นตระกูลไทย を立ち上げた。
そのような経緯で今回の都知事選に出馬することになったチューウィット氏だが、都民の反応はおおむね好意的だ。
「どうせ誰が都知事になってたところで何も変わりやしないんだから、奇妙でオカシイ人を選んだ方がまだマシかもしれない」(友人談7月19日)
「たしかにチューウィットの評判はいいわ。知名度は高いし、印象も強烈。おそらく当選しないまでも、それなりの得票数は確保するでしょうね」(友人談7月26日)
彼の強烈なイメージ戦略は、都内で最も多く設置されている選挙ポスターにも表れている。
審判を下す前に、ちょっとだけ私に機会を与えてくれ
15 チューウィット・ガモンウィスィット(タイ始祖党)
きょうは複合商業施設マーブンクローングセンター4階の携帯電話売場へ行って友人の携帯電話購入に付き合っていたところ、偶然にも話題の人であるチューウィット・ガモンウィスィット氏に遭遇し、直筆サイン入りのプロマイドを手に入れた。