大人のオンナはオトコを容姿だけでは選ばないとは聞いてたけれど、ここまで露骨に言われてしまうとさすがに少しゲンナリする。
「私が働いていたのは政府の高官やその師弟たちが好んで通っているスクンウィット界隈にあるクラブで、もちろんみんな高級車に乗って店に来るわ。フェラーリなんていうのもザラよ。で、こういったケースをイヤというほど見てきた私からすると、先月あなたをゲットしようと頑張っていたタックなんだけど、クルマを持っている金持ちにたかろうとしていたとしか思えないのよね。もしかして本気で自分が好かれていたとか思ってたりする? 」
およそ1ヶ月ぶりにホーガーンカータイ大学の前にある学生向けのパブ街へ繰り出した。僕たちが仲良くしていたグループは、そのあいだにいろいろとあったそうで、グワーングを除く全員がまったく別の顔ぶれに替わっていた。もしかしたらグワーングがタックを貶めようとして言っているだけなのかもしれないけれど、この話を聞いて僕は夜の街を徘徊している女性たちから適切な交際相手を選ぶことの難しさについて改めて痛感した。彼女たちはそれなりに経験が豊富で、しかも数多くのサンプルから「理想のオトコ」を比較選別しているだけに、男性の方にも彼女たちの動機や目的を見抜く能力が求められる。
グワーングが話していたようなことは、自分自身もタイへ来た当初から気かけていた。それだけに、平均的な日本人より裕福なタイ人と付き合えば、金銭を目的に結婚させられるような屈辱的な人生からは免れるというポリシーのもとで行動してきた。しかし、大正時代の代表的な日本人の女流作家たちが「結婚とは女性が経済的な利益を得るために行われる売春の最たるもの」と唱えていることからも分かるように、恋愛とか結婚とかいうものは少女マンガに出てくるような世界観とは完全に一線を画している。
タックの件については、僕自身がまったく気にしていなかったからゴシップのネタとして楽しく話を聞くことができたものの、「もし自分が金目当てのオンナに恋に落ちていたら」と考えるとゾッとしなくもない。このような経験は日本帰国後にもするだろうから、今後はこれを教訓に気をつけるよう心がけたい。
きょうは午前中の「 ASEAN 地域論」 と午後の「東南アジア文明論」に出席してから、サヤームスクウェアにある Starbucks Coffee へ行ってクラスメイトたちと文献を読み、ホーガーンカータイ大学の前にある学生向けのパブ街へ友人たちと繰り出した。今晩、はじめてタイの地酒「サートー」を飲んだ。
先月2日から僕たちが気にしていた疑惑は、どうやら正しかったようだ。