ここのところ、ヂュラーロンゴーン大学中央図書館の閉館時間後に、スィーロム通りにある珈琲屋 Coffee Society へ行って深夜までペーパーを書くといった生活が続いている。
どんな国でも、都心部には世界中からやってきた外国人たちが集まってくる。特にナンデモアリのバンコクには、それこそ真の変わり者たちが勢ぞろいしている。同姓同士で抱き合ったり膝枕をしたりして楽しんでいる同性愛者たちをはじめ、男臭い「兵役生活のすばらしさ」について英語で語り合って盛り上がっている台湾人観光客たちなど、見聞きしているだけで気分が悪くなるという点を除けば、とても強烈な人たちばかりでペーパー作業中の気分転換にはもってこいだ。
そこにはヂュラーロンゴーン大学の文学部が主催しているインテンシブタイで講師を務めている女性と中途退学をした元生徒の日本人男性も来ていた。この2人組とは別のインテンシブタイに在籍している学生から聞いた話では、いま文学部内でアイドル的な人気を誇っている日本人留学生がいるらしいのだが、その講師と元生徒の2人組は、そのアイドル日本人留学生を「たいしたことないヤツ」(俺のほうがイケてる)の一言でバッサリと切り捨てていた。さらに、日本の超優良企業「三井物産株式会社」から派遣されて会社の経費でタイ語を学習している学生を「チープなヤツだ」と言ってこき下ろしていた。
女子学生のあいだでアイドル的な人気を築くのも、日本の超優良企業に就職するのも、並大抵の人にはそうそう真似のできるようなことではない。この店で変人たちの話を聞くのもそれなりに楽しいが、さすがに実力なき者の大言壮語を聞かされるのは本当に辛い。
タイのような格差社会で生活していると、それなりに優越感に浸れる場面はたくさんある。当然、中流以上のタイ人にだってその機会は十分にある。しかし、慢性的に優越感ばかりに浸り続けていると、どうも自分より上の人間と下の人間の区別がつかなくなるという悪い癖が日本人にはあるようだ。
(その人が「チープなヤツ」だったら、お前はいったい何になってしまうんだ?)
僕は自分も同じ日本人であることを暴露して、そのふたりの会話に割って入って、そう聞いてみたいという衝動に駆られたが、嫉妬による劣等感を謎のプロセスのなかで優越感に変えてしまうようなヤツに何を言っても無駄だと考えて思いとどまった。彼らには自己完結型の優越感に浸るより、実際に優位に立ってから優越感に浸るよう求めたい。バンコクにいる日本人って、こんなのばっかりだから本当にイヤになる。
きょうはヂュラーロンゴーン大学の中央図書館で自習仲間たちとペーパーを書いてから、珈琲屋 Coffee Society へ行って午前3時まで作業を続けた。