奇妙に肌寒い夜

「この寒さ、いったいバンコクはどうしちゃったのかしら? 身体の芯まで冷え込んできたわ」

半袖のTシャツ1枚の格好で少しでも肌寒く感じると、タイ人の女性はすぐに「寒い」と騒ぎ立てては上着を羽織り、マフラーを首に巻くなど、ものすごく大げさな行動に出る。そんな過剰反応に、留学初期の頃からウンザリしていたが、さすがに今晩の寒さは尋常ではなかった。バンコク午前3時半時点の気温は18度。冬の一時帰国に備えてタンスの奥深くにしまい込んでいた厚手のジャケットを取り出して羽織らないと、このままでは本当に風邪を引いてしまいそうだ。

夜、スクンウィット13街路にある住まい Sukhumvit Suite 17階の自室で、友人とタバコをふかしながら、かれこれ5時間にもわたってウイスキーのシーバスリーガルを飲み続けていた。リビングの空気がタバコの煙で真っ白になり、換気をしようとベランダの扉を開けたところ、5分もしないうちに部屋全体が冷気に包まれた。あまりの寒さに、すっかり酒が回っていたこともあって、思わずエアコンのリモコンを手にとってボタンを押そうと「暖房」の文字を探した(もちろんタイのエアコンに暖房機能なんか付いてない)。

友人によると、この寒さは夕方に降った季節外れの雨のせいだという。タイの北部にあるチアングマイのような都市ならこの程度の寒さも日常茶飯事なのかもしれないが、バンコクで外気が肌寒く感じられることがあるとは本当に意外だった。

きょうは、友人が経営している会社へ遊びに行ってから、夜になって別の友人と Central World Plaza の前にある仮設のビアガーデンで待ち合わせをして、大量のハイネケンビールを飲みながら友人の生い立ちについて話を聞いた。その後、自室に戻ってウイスキーを飲み続けた。

ABOUTこの記事をかいた人

バンコク留学生日記の筆者。タイ国立チュラロンコーン大学文学部のタイ語集中講座、インテンシブタイ・プログラムを修了(2003年)。同大学の大学院で東南アジア学を専攻。文学修士(2006年)。現在は機械メーカーで労働組合の執行委員長を務めるかたわら、海外拠点向けの輸出貿易を担当。