日常的拷問体験 同性愛者による情欲的な眼差し

もともと同性愛者に対して嫌悪感を持っていたわけではないが、こうもセクハラまがいの嫌がらせが続くと、ネガティブな感情が生まれ、それは次第に敵意へと変わっていく。

「自分のタイプの人が自分に興味を持ってくれたら、それは本当にすばらしいことよ。みんなそう思っているんじゃないかしら。で、もしそうだったら、せっかくの機会を生かさないと損ってもんじゃない? あいにく今回は同性愛者がそう考えていただけで、別に不思議なことではないわ」

友人はそう言うが、僕の心中はまったく穏やかではない。締切に追われて一日中ペーパーを書いているだけでも苦痛なのに、目の前に初老の西洋人が立ちはだかって1分以上も僕の目をじ――っと見てきたり、隣のテーブルにいる5人組のタイ人男性たちが僕たちのほうを何分間も凝視しながら、ものすごく気色の悪い声色で「キャー」とか「アーオ」などと叫び、猥談で盛り上がっている。

同性からまるで目で犯されているかのような状況に耐えられなくなり、とうとうあらぬほうに向かってラムカーン(鬱陶しい)と叫んでしまった。彼らの非常識な行為は本当に許し難いが、法に触れるような行為ではない以上、あからさまな抗議の声を上げるわけにもいかず、こうでもするほかに事態を改善するための方法が思いつかない。

同性愛者たちが僕たちを凝視するたびに自動車盗難防止装置の警報音のような音が鳴る仕掛けがあればいいのに・・・・・・と友人たちと話しながら気を紛らわせた。

女性は全身を舐めるように見られると不快になるというが、その鬱陶しさ体感するかのような日々が続いている。

ABOUTこの記事をかいた人

バンコク留学生日記の筆者。タイ国立チュラロンコーン大学文学部のタイ語集中講座、インテンシブタイ・プログラムを修了(2003年)。同大学の大学院で東南アジア学を専攻。文学修士(2006年)。現在は機械メーカーで労働組合の執行委員長を務めるかたわら、海外拠点向けの輸出貿易を担当。