バンコクの朝

午前6時10分、あす発表する予定のプレゼンテーション資料を作り終えてから、スィーロム通り沿いにある珈琲屋 Coffee Society の外へ出てみると、すでに空はうっすらと明るくなりはじめていた。

ついさっきまでスィーロム通りの歩道を埋め尽くしていた土産物屋台の姿はすでになく、あたりに散乱していたビニール袋やタバコの吸殻などもきれいに片付けられていた。友人によると、午前3時半から4時半までの約1時間のあいだ、毎晩、バーングラック区から委託された業者が歩道を清掃しているという。

バンコクにおける公共交通機関は、太陽が昇る前から動き出す。郊外にある住宅地から普通バス(冷房なし, 4バーツ)に乗って都心部までやってくる労働者たちは、夜明けのうちに家を出ることで、通勤ラッシュの大渋滞にハマって排気ガスまみれになるのを避ける。

これまで、バンコクの街を早朝に出歩くことがほとんどなかったため、見るものすべてが新鮮で目新しかった。タクシーに乗ってスィーロム通りとラーチャダムリ通りを北上してペッブリー通りへ入ると、プラトゥーナーム交差点付近にある市場に人だかりができていた。人々はその市場で買ったばかりの寄進物を山吹色の袈裟を纏っている仏教僧たちに手渡し、Tシャツ姿の荷物持ちの男へ次々と渡していった。

連日連夜のペーパー作業はまさに苦行そのものだが、少しだけココロが洗われたような気がした。風情があって、なかなかいいじゃないか。

ABOUTこの記事をかいた人

バンコク留学生日記の筆者。タイ国立チュラロンコーン大学文学部のタイ語集中講座、インテンシブタイ・プログラムを修了(2003年)。同大学の大学院で東南アジア学を専攻。文学修士(2006年)。現在は機械メーカーで労働組合の執行委員長を務めるかたわら、海外拠点向けの輸出貿易を担当。