ペーパーを書きにチアングマイへ

「いきなりチアングマイへ行くなんて、ちょっとあまりにも唐突すぎるんじゃない? 北部の山間部では、ここのところ地滑りが多発してるうえに死者まで出ているのよ。斜面には近づかないように注意してね。で、なにで行くかもう決めているの?」

あさ、電話口でチアングマイへ出かけると伝えたところ、友人はこのように話していた。バンコクからチアングマイへ行く方法は、航空機、列車、長距離バスの3通りから選択できるが、一昨年は列車を、昨年は航空機を利用している。そこで、友人が以前「自家用車で行くのは無謀。あの山道を運転するだけで全旅程の体力をすべて使い切ってしまう」と言っていたのを思い出して、今回はそれがどれだけ強烈なものか実際に体験してみるために長距離バスの座席から見物してみるつもりだった。

着替え、洗面道具、それにペーパーを書くために必要な参考文献7冊を旅行カバンに詰め込んでから、サヤームスクウェアにある Chester’s Grill へ行ってクラスメイトと昼食をとったついでに、貸していたデジタルカメラを返してもらった。そこで、ふたたび友人からの電話があった。

「オリエントタイ航空がいいわ。チアングマイまでの運賃は片道1,349バーツ。寝台特急でも1,000バーツぐらいはかかるから、これぐらい出しても十分割に合うはずよ」

今回のチェンマイ旅行は、あくまでもペーパーを仕上げるためのものだ。だから肉体的な負担は少ないほうが良い。長距離バスも捨てがたいが、ここはおとなしく友人のアドバイスに従って、そろそろ鬱陶しくなってきたペーパー作業をさっさと片付けてしまいたい。

その後、ヂュラーロンゴーン大学の文学部4号館にある東南アジア学研究所へ行って来学期分の授業料を納め、その足でバンコク・ドーンムアング空港へ向かった。国内線ターミナルにあるオリエントタイ航空の窓口でチアングマイ行きの片道チケット(税込1,349バーツ)を購入し、チェックインカウンターに並んだ。

オリエントタイ航空120便は、機材トラブルの影響で出発が大幅に遅れ、西日が眩しい午後5時ごろにチェンマイ空港へ到着した。このまま目的地のサンガンペーング温泉へ行ったところで、もし宿泊の受付担当者がすでに帰宅していたら目も当てられないから、今晩はチアングマイ市内にある中級ホテル「ターペープレイス」(650バーツ)に泊まることにした。チェックインをして部屋へ入ってから、すぐにペーパー作業に取りかかった。

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バンコク留学生日記の筆者。タイ国立チュラロンコーン大学文学部のタイ語集中講座、インテンシブタイ・プログラムを修了(2003年)。同大学の大学院で東南アジア学を専攻。文学修士(2006年)。現在は機械メーカーで労働組合の執行委員長を務めるかたわら、海外拠点向けの輸出貿易を担当。