「スリヨータイを見たことはあるでしょう? きょうの『内官スィースダーヂャンの反逆』は、実話のスリヨータイをパロったフィクションものなの。だから退屈することはないし、まあいいんじゃない?」
午後8時すぎ、高架電車のエーガマイ駅前にある映画館 Major Cineplex で友人と合流し、エスカレーターをダッシュで駆け上って、窓口へ行ってチケット(120バーツ)を購入した。第2映写室で本編が開始する前に流される予告編を眺めながら、友人がきょうの映画について簡単に説明してくれた。
タイ映画「内官スィースダーヂャンの反逆」は、古都グルングスィーアユッタヤーを舞台とした歴史物のアクション映画で、 West Side Story のデーヴィス・ウインターズが監督を務め、デーヴィスと20年以上の親交があるタイ人の映画監督レック=ギディプラーポーン(代表作:ヘークカーイナロックディアンディアンフー)が構成を担当している。外国の冒険小説「ピントー」に登場する内官スィースダーヂャンの項を参考にして制作され、2億8,000万バーツもの巨費が投じられた。
https://www.youtube.com/watch?v=fzQAv4yxNeA
ポルトガル人の傭兵フェルナンド・ド・ガンマ(ゲーリー・ストレッチ演)は、8歳のときに自分の父親を誰かに殺された。その殺人者を追って、世界中から集まった仲間たちとともに東南アジアへ向かった。ところが1547年、フェルナンドの船は広大なインド洋を航行中に高波を受けて沈没してしまった。フェルナンドはただひとりの生き残りとして陸地に流れ着くが、そこでアラブ人の奴隷商に捕らえられてアユッタヤーまで連れてこられた。
当時、アユッタヤーでは、東西さまざまな国から連れてこられた奴隷たちが盛んに売買されていた。フェルナンドは、城壁の建設に従事していたポルトガル人フィリップ(ジョーン・リース・テービス演)の娘マリア(シンディー・バーブリッジ演)によって買い取られ、ようやく自由を回復することができた。
アユッタヤー王プラチャイラーチャー(ニルット・スィリヂャンヤー演)は、ラーンナー(タイ北部の従属国)王が自分が送った使者を斬首して送り返してきたことに激怒して、王兄プラマハーヂャッグラパット(オリヴァー・ルパート演)のほか、ポルトガル人や日本人からなる義勇兵を率いて出兵し、フェルナンドも経験豊富な傭兵として参戦することになった。その勇敢な戦いぶりは王の目に留まり、タイ人の戦友トーング(ドーム・ヘートラグーン演)とともに近衛兵に任じられた。
美しいが冷酷な内官スィースダーヂャン(ヨッサワディー・ハッサディーウィヂット演)は、愛人のスィーテープ(アッタラー・アマータヤグン演)を王位につけるために、プラチャイラーチャー王とそのあいだにできた子、プラヨートファー王子(チャーリー・トライラット演)のふたりを忍者に暗殺させようと画策していた。近衛兵となったフェルナンドとトーングは王の身に危険が迫っているを察知して調査を進めたところ、謀反の黒幕がマリアの父フィリップであることをつきとめた。
ところが、その背後にいる内官スィースダーヂャンの存在に気付かなかったため、王は暗殺者の手によって殺されてしまった。フェルナンドとトーングのふたりは、国王弑逆に成功して権力を手中に収めた内官スィースダーヂャンによって黒幕の一味の濡れ衣を着せられ、マリアやトーングの家族とともに捕らえられた。
この作品は、ありがちな勧善懲悪ストーリーだ。「王権=正義」の構図を人々に植え付け、国王に対する忠誠心を高めることをねらったものともいえる。クライマックスでは、王族が奸臣を打倒して、正義を高らかに宣言するシーンが登場する。現在、タイの深南部でテロが相次いでいることもあって、タイ政府は、国民の団結を、国王、宗教、タイ語という3つの要素によって強化しようと躍起になっている。
ところで、タイの歴史については、1886年の教育改革のときに、当時タイの教育相だったダムロングラーチャーヌパープが創作した、とする説がある。だから、映画「スリヨータイ」(2001年)だって、どれだけ史実にもとづいて作られているのか、まったく分かったもんじゃない。その点にさえ気をつけておけば、この作品は十分に楽しめる。
きょうは、スィーロム通り沿いにある珈琲屋 Bug and Bee へ行って友人たちとペーパーを書いてから、高架電車のエーガマイ駅前にある映画館 Major Cineplex で別の友人と映画を観た。