「大丈夫ですよ、絶対に間に合いますって。わたし昔から運だけはいいんです。あ、あの店の店員ならきっと知っていると思います。ちょっと行って話を聞いてみますね」
午後11時15分、プラーヂーンブリー県スィーマハーポー郡の国道304号(スウィンタウォング通り)の路肩にクルマを駐めると、友人の日本人女性が真っ暗な田舎道にひっそりと佇んでいるムーガタ屋へと走っていった。
先日来、日本へ帰る前に一度 Endorphine の美声を聴いておきたいと周囲に触れて回っていたことが功を奏して、昼すぎになって「プラーヂーンブリー県の Factory Pub でライブがある」という知らせが友人からあった。その友人とは地下鉄バーングスー駅前で合流し、地図も持たずにプラーヂーンブリー県の中心部へ向かってクルマを走らせた。
アテにしていたプラーヂンブリーの市街地に Factory Pub は見当たらなかった。パブによってはゲストバンドによるライブが午後10時から始まるところもある。はるばるバンコクからクルマを130キロも走らせてきたというのに、目的地の場所すら分からないままコンサートが終わってしまったとあってはあまりにも虚しすぎる。スウィンタウォング通りの道路脇にある電柱にくくりつけられている「3月3日に Factory Pub で Endorphine のコンサートがあります」という看板を見つけていなかったら、いよいよ疑心暗鬼になっていただろう。
Endorphine は 、ダー=タニダー・タンマウィモン(ボーカル)、バート=タナット・アモンラマーナット(ベース)、ギア=アヌチャー・ボートーンカムグン(ギター)、ボーム=タパポン・アモンマーナット(ドラム)の4人からなる G”MM’ GRAMMY の有名バンドだ。これまでにプリックとサッガワー49の2枚のアルバムを発売しており、代表曲には親友、大切なもの、夜に咲く花などがある。
このバンドは当初、中等教育学校後期課程生(日本の高校生に相当)のギアやボームら3人で結成された。その後、ベースを担当していたメンバーが大学へ進学するためにバンドから抜けると、新たにバートを加えてさまざまなオーディションに参加するようになった。サヤームスクウェアのセンターポイントでおこなわれたオーディションでバラード系とロック系双方の楽曲を見事に歌いこなす当時中等教育学校前期課程生(日本の中学生に相当)だったダーに目をつけて自分たちのメンバーに加えた。バンドの名称になっているエンドロフィンとは、モルヒネと同じのように鎮痛や多幸の作用があるとされているエンドルフィンという脳内で機能する神経伝達物質のことで、人々を幸せにするようなバンドを作りたいという願いからきているという。
午後11時半、真っ暗な田舎道をなかば諦め気味に運転していたところ、道路の左側に市場のような建物が見えてきた。その手前では長い路上駐車の列ができており、その先頭で警察官が交通整理にあたっていた。奥のほうへ目をやってみると Factory と書いてあるネオンが輝いているのが見えた。
Factory Pub はプラーヂンブリー県のガビンブリー郡にあった。バンコクから165キロ離れている農地と工業団地の街で、タイ投資奨励委員会(BOI)が一定の基準を満たしている外国企業に対して法人税を8年間免除するなど税制上の最高レベルの恩典が与えられる「ゾーン3」に指定するほど開発が遅れている地域だ。もちろん客層や店の雰囲気については言うに及ばず。前座では田舎特有の下品極まりないお笑いのコントが演じられていた。日系企業が多く進出しているためか、市場の一角には日本人向けの田舎臭いカラオケスナックもあった。
午前零時半、ついに Endorphine のライブが始まった。すでにステージの前は予約客たちでひしめき合っていたが、友人がビール瓶を片手に猛烈な突進を見せてくれたおかげでかなり良い位置から鑑賞することができた。ボーカルのダーは自分たちの持ち歌を織り交ぜながらも、ここ数年のあいだに流行ったほかのアーチストたちの持ち歌を次々と披露していった。しかもオリジナルより全然上手い。もし Thai Pops Best 10 by Da Endrophine という CD が発売されたら絶対に即買いするだろう。今晩は歌の神様を見た。
年末から年始にかけて、Endorphine の น้ำเต็มแก้ว(コップいっぱいの水)が各ラジオ局の「今週の第1位」を独占していた。
น้ำเต็มแก้ว – เอ็นโดรฟิน
コップいっぱいの水 – エンドロフィンวัน วันที่เป็นอยู่ เฝ้าทำเพื่อเธอทุกอย่าง แต่ใจเธอไม่เคยลืมรักครั้งเก่า
いつもあなたのために尽くしているのに 今もあなたは過去の恋を引きずったまま
เธอเป็นแก้วใบหนึ่ง ที่เต็มไปด้วยน้ำเปล่า ยิ่งเทเติมลงไป มีแต่ล้นออก
あなたはまるで水でいっぱいに満たされたコップ 注いでも注いだ分だけ溢れ出す
คนเก่า รักเก่า เธอไม่เคยลบเลือน คนใหม่ รักใหม่ เลยท้อ
過去の人 過去の恋 今もあなたは執着してる 新しい人 新しい恋 だから全然ヤル気ない
จริงๆ เข้าใจอยู่ กับความทรงจำครั้งเก่า แต่อย่าเอามันมาปิดกั้นหัวใจ
ホントは何があったか分かってるけど そんなことで心閉ざさないでよ
เปลี่ยนเป็นแก้วเปล่า แก้วใหม่ เปิดใจทีนะเธอ รับหน่อยรู้หน่อย
お願いだから空っぽの新しいコップに取り替えて心開いてよ 受け入れてよ 分かってよ
ความรักจากฉัน
私の愛情を
ฉันยังต้องรออีกนานไหม ต้องรอเธออีกนานไหม
あとどれだけ待てばいいの? あなたをあとどれだけ待てばいいの?
ถึงจะได้เจอะกับรักที่เธอเคยบอกฉัน
あなたが語ってくれたあの「愛」に出会うまで
เมื่อไรรักเก่าระเหย ฉันรอให้เธอได้ลืมเขาซักวัน
いつになったら過去の恋は蒸発するの? 私はあなたがあの人を忘れる日が来るのをずっと待ってる
เพื่อการเริ่มใหม่ ครั้งใหม่ เพื่อเธอกับฉัน และรักเรา
新しく始めるために あなたと私の愛のために
ทุ่มเท เท่าไหร่ มันก็ล้นเท่านั้น ไม่อาจ สัมผัส เข้าถึง สักครั้ง
どんなに注いだって ただ溢れ出すだけ あなたの心に触れることなんて 一度だってできっこない
ฉันยังต้องรออีกนานไหม ต้องรอเธออีกนานไหม
あとどれだけ待てばいいの? あなたをあとどれだけ待てばいいの?
ถึงจะได้เจอะกับรักที่เธอเคยบอกฉัน
あなたが語ってくれたあの「愛」に出会うまで
เมื่อไรรักเก่าระเหย ฉันรอให้เธอได้ลืมเขาซักวัน
いつになったら過去の恋は蒸発するの? 私はあなたがあの人を忘れる日が来るのをずっと待ってる
เพื่อการเริ่มใหม่ ครั้งใหม่
新しく始めるために
บอกหน่อยฉันควรรอต่อไปไหม ต้องรอเธออีกนานไหม
教えてよ 私はこのまま待ち続けるべきなの? あなたをあとどれだけ待てばいいの?
ถึงจะได้เจอะกับรักที่เธอเคยบอกฉัน
あなたが語ってくれたあの「愛」に出会うまで
เมื่อไรรักเก่าระเหย ฉันรอให้เธอได้ลืมเขาซักวัน
いつになったら過去の恋は蒸発するの? 私はあなたがあの人を忘れる日が来るのをずっと待ってる
เพื่อการเริ่มใหม่ ครั้งใหม่ เพื่อเธอกับฉันและรักเรา
新しく始めるために あなたと私の愛のために
ダーの歌声と、ひとりでも多くの聴衆と握手を交わそうとするその姿勢にすっかりと魅了された。
昼すぎ、ンガームウォングワーン通りにある家具屋を友人と見て回ってから、別の友人とプラーヂンブリー県へ行って Endorphine のライブを鑑賞した。ライブの終了後、友人とボーとのツーショット写真を撮影した。急ぎエンドロフィンのメンバーを乗せたバンをパパラッチしてみたが途中で見失ってしまった。友人をペッブリー通りにあるアパートまで送り届けてから帰宅した。