タイで旅行者が娼婦以外の一般人女性と出会える機会はほとんどない

「タイの大学に通っていない僕のようなごくごく一般的な日本人男性にとって、タイの女の子と知り合いになれる機会なんてせいぜい夜の歓楽街ぐらいにしかないんですよ。ケイイチさんが日頃からブログで『娼婦』と呼んでバカにしている売春婦たちのほかに、そもそも選択肢がないんです。タイ人のなかからいい女性を見つけて交際するというのも、それはそれで個人の選択として否定するつもりはありませんが、僕は、バンコクにいる今だからこそ、バンコクにいる日本人女性と知り合ってお付き合いするのがイチバンだと思うんです」

午前零時半、スクンウィット22街路にある格安居酒屋「あさみ」2階の宴会場で、卒業前の休暇を利用してバンコクに滞在している立命館大学の男子学生は中ジョッキのビールを片手に自説を雄弁に唱えていた。

だからこそバンコクにはタイ人の娼婦を自分の彼女にしてしまうという哀れな日本人男性たちがそれこそごまんといるのだし、そのような日本人男性たちによってタイ人全体が「女性=娼婦」といったとんでもない構図で語られがちになっているのだが、何はともあれ、何らかの制約によって世間一般のタイ人女性と交際することができないのであれば、身近にいる日本人の女性と交際したほうが良いというのは間違いない。タイ留学のパフォーマンスを最大化するといった観点では依然課題は残るものの、それでも「恋愛」を純粋に楽しみたいといった観点から考えてみれば、むしろ王道と言っても良いのかもしれない。有償のサービスとしてタイ人娼婦たちによって提供されている「ビジネス恋愛」に入れ込んでしまうことに比べれば、そのほうがはるかに優れている。

実のところ、バンコクでまともなタイ人の女性たちとお知り合いになる方法はタイの大学に通っていなくてもいくらでもある。しかしとかく無謀な行動に走りがちな一部の日本人男性たちにそのノウハウが知れてしまうと、タイにおける日本人全体の評判を落とす原因にもなりかねないから、ここで公表することは差し控えたい。

午後2時、日系の物流業者が引越費用の見積りに来る予定になっていたのでスクンウィット13街路にある住まい Sukhumvit Suite 17階の自室で待機していたところ、東南アジア学研究室の職員から電話があった。「必修3科目のうち東南アジア植民地論の論述問題が不合格だった。まだ時間はたっぷりあるから1ヶ月間みっちり復習して再試験に臨んでほしい」という話だった。しかし今月末には就職が内定している会社の新入社員研修会が日本で始まってしまうため、なにがなんでも本帰国を2週間後の今月20日までに完了させておく必要があり、やむなく職員に無理を言って追試験の日取りを今月16日に設定してもらった。もしその試験でも不合格になったら規則によって除籍が確定する。つまり退学になる。午後3時、今月13日に期限が切れる留学ビザを延長するためにスワンプルー通りにある入国管理局へ行ったところ、誤って大学の招聘状ではなく明日からの旅行で泊まるホテルの予約証を持ってきてしまったため完全に無駄足となった。午後8時半、プララームハー通り(ラーマ5世通り)にあるオシャレな中華料理屋へ行って夕食を取っていたところ、ブログ「バンコク遊学生日記」の作者であるユウスケさんから電話で飲み会に誘われたため、急遽大学院の日本人クラスメイトを誘って、居酒屋の「あさみ」へ出かけた。

ABOUTこの記事をかいた人

バンコク留学生日記の筆者。タイ国立チュラロンコーン大学文学部のタイ語集中講座、インテンシブタイ・プログラムを修了(2003年)。同大学の大学院で東南アジア学を専攻。文学修士(2006年)。現在は機械メーカーで労働組合の執行委員長を務めるかたわら、海外拠点向けの輸出貿易を担当。