「実際に修理工場へ持ち込んで詳しく調べてみないことには断言のしようがないけれど、エンジンまわりに油漏れをしている箇所があるし、サスペンションも完全にイカれているから、買取価格はどんなに高くても30万バーツよ。ボディカラーが青や黒のような人気色だったら、まだ少しは良い値が付いたかもしれないけれど、赤は不人気だからねえ。まあ、お金のほうは数時間もあれば用意できるから、気が向いときに連絡をちょうだい。これ以上の値段で買い取る業者なんて、どうせいないとは思うけど」
午後2時、プララームソーング通り(ラーマ2世通り)にある中古車屋の女性店主は、そう言って名刺を手渡してきた。交渉上手な友人がいろいろと粘ってくれたが、やはり本職のほうが上手だった。
その後、ちかくにあった中古車屋に立ち寄ってみたところ、「25万バーツだ。それ以上は絶対に出せない。イヤなら他をあたってくれ」といった素っ気のない返事しかもらえなかった。そこで、タイの中古車屋による査定金額がいかにいい加減なものか知った。
僕のクルマは、タイの国内でフォルクスワーゲン社などから委託を受けて自動車を生産しているタイ資本のヨンタギット社が、1994年にドイツの BMW 社から部品の供給を受けて組み立てた12年落ちの BMW 318i で、現在の走行距離は122,000キロ。いまから2年半前の2003年10月に62万バーツを出して購入したもので、当時の走行距離は89,000キロだった。
今回、目標としている販売価格は30万バーツで、もし35万バーツで売れればラッキーぐらいに考えている。28万バーツを下回る価格で売るぐらいなら、バンコクに赴任してくるまでのあいだ友人の家に預けておいた方がマシなはずだ。
中古車屋がたくさんあるガセートナワミン通りにも立ち寄ってみるつもりだったが、プララームソーング通りにある中古車屋をまわってみたところ、思っていたような値が付かなかったため脱力してしまい、チャルームマハーナコーン自動車道を使う最短のルートでスクンウィット13街路にある住まい Sukhumvit Suite まで戻ってきた。
Sukhumvit Suite の1階にあるエントランスで、大学院留学のごく初期の頃にアルバイトをしていた学習塾の元同僚と遭遇し、すぐ横にあるバーへ入って本帰国前の挨拶も兼ねてビールを飲んでいたところ、さらにもうひとりの元同僚が加わった。