午前中、高架電車パヤータイ駅のちかくにある転職先のタイ現地法人へ行って挨拶をした。午後5時40分から、求職中の友人とスクンウィット53街路にある日本風居酒屋「いもや」で夕食をとり、午後11時半に仕事帰りの国鉄職員が合流した。
「カネのことは気にしないで、今晩は思い存分楽しんでくれ。1日3,000バーツまでなら、経費処理で何とでもなるからさ」
午前零時、パホンヨーティン通りのオートーゴー(農業市場公団)にあるパブ CHA-BAR で、友人たちと低品位のスコッチウイスキー 100 PIPERS を飲んだ。これ以降に発生する費用については、タイ国鉄で月給約6,000バーツの下級職員として働いている友人が全額経費で支払ってくれることになっていたため、店の選択や酒の種類について贅沢を言うことはできなかった。ちなみに、現在求職中の別の友人の父親は、タイ内務省の上級職員として約30,000バーツの月給をもらっているそうだが、1日に使える経費は7,000バーツが上限らしい。
このクラスのウイスキーを置いているパブは総じてイケてないというのがセオリーだが、肺に吸い込んだ空気が振動するほどの重低音といい、店内にいる客の盛り上がり方といい、なかなか良かった。いまだ田舎臭さは残っているものの、あのオートーゴーがここまでまともになっていたとは驚いた。
午前2時半、ワットドゥワングケー街路の入口にある低所得者向けのカラオケスナックへ行って、全部で30席ある大部屋2号室のソファーに座り、それまで低品位のスコッチウイスキーばかり飲み続けていたせいで吐きそうになっていたにも関わらず、さらに 100 PIPERS を追加注文した。ちかくに貧乏で不健康そうなタイ人男性客の3人組が座っていたが、それでも店内で一番マシなホステスが付いてくれたのはせめてもの救いだった。おそらく、友人の国鉄職員が気を利かせて、一番まともなのを指名しておいてくれたんだろう。タニヤにいるホステスたちに比べれば、いくらかマシな容姿をしているし、酒をガブ飲みしながら友達感覚で話に付き合ってくれたため、ノリノリになりすぎて僕まで踊らせようとしたのには閉口したが、それなりに楽しい雰囲気のなかでタイポップスを熱唱することができた。
กรุณาให้เกียรติ แก่ “เด็กนั่งดริ๊งค์” ด้วยค่ะ
ホステスに敬意を払ってください
タイの社会では、娼婦ほど蔑まれている職業はほかにないため、ソープランドやカラオケスナックの従業員に対して酷いことをするタイ人の男性客も少なくない。壁に貼られていたこの掲示が、その問題の根深さを如実に物語っていたが、僕は普段から(積極的に話しかけることはないが)それなりに丁寧に対応しようとを心がけている。
「店は午前7時に閉店するから、それまではゼッタイに店にいてよね! おクスリを飲めば、どんなに疲れていたってバリバリよ」
この店の常連客である友人の国鉄職員は、「この日本人はヂュラーロンゴーン大学の修士だからタイ語ぐらい楽勝さ」と僕のことを自慢してくれていたが、それが原因でかえってホステスから気に入られすぎて、通常800バーツのセックスを無料にするという内容のオファーを受けてしまい、どのように相手に敬意を払いながら断れば良いものかと対応に苦慮した。タイの性風俗業に関する一応の知識さえあれば、どんな性欲だって恐れをなして一瞬で引っ込んでしまう。ホステスたちはクリニックで行ったエイズ検査の結果を勤務先のカラオケスナックに対して定期的に報告しているから大丈夫という説もあるが、タイの医師は100バーツ程度の追加料金を支払うだけでどんな内容の診断書だって書いてくれるのだから、そのような噂を額面通りに信用してしまうのはあまりにも間が抜けすぎている。
店の立地や雰囲気では、日本人向けの店舗のほうが優れていることは疑いようもない。しかし、サービスの質や人材のレベルといった観点から見れば、タイ人低所得者向けの店舗のほうがはるかにマシだ(基本的に日本人向けのサービス業に従事しているタイ人の勤労意欲は低い)。午後5時半、ヂャールムアング通りで友人たちと解散して、ひとりタクシーに乗って帰宅した。