タイの困窮邦人の暮らしを見学して娼婦との語らいを体験してみよう

午後2時、高架電車のサヤーム駅で、お盆の連休を利用してバンコクに滞在している友人と合流した。このバンコク留学生日記を丸々暗記してくれている友人による、ディープなタイを見てみたいというご要望にお応えして、さっそく下流日本語話者たちが集住している賃貸アパート「ラーチャプラーロップタワーマンション」へ向かった。

今回、レセプションの係員に部屋を探していると言って見せてもらったのは、ラーチャプラーロップタワーマンションの2号棟にある7階の部屋だった。家賃は5,600バーツで、冷蔵庫、電子レンジ、ブラウン管テレビのレンタル料金が含まれている。クイーンサイズのベッドのほか、タンス、テレビ台、冷房、温水器、浴槽などが標準装備されており、窓からは高速道路も一望できる。それぞれの階の廊下には無線 LAN の親機が設置されており、4ヶ月以上の賃貸契約をすれば通信速度0.256Mbpsの Wi-Fi が無料、6ヶ月以上の賃貸契約をすれば通信速度0.512Mbpsの Wi-Fi が無料になる。レセプションの係員によると、このアパートには約500の部屋あって、そのうち約半数に日本人が入居しているという。

しかし、エレベーターがないため、最上階の7階にたどり着くころには、間違いなく汗だくになっていることだろう。それに、日系企業のタイ現地法人の中には、ここに住んでいる日本語話者の質を疑問視する声も少なくない。ここに住んでいるというだけで不採用になるケースも珍しくないという(採用後に転居を促されるケースもある)。しかも、「もはや失うものは何もない」という状況まで困窮している下流の日本語話者たちが多数入居しているため、日本語話者たちによるトラブルに巻き込まれた場合、いったいどのような目に遭うのか見当が付かないなど、不安要素について考えてみると、それこそ枚挙にいとまがない。

「危険な人物には、近づかない、関わらない、話しかけない」

これは、タイへ赴任するときに必ず教わるタイ在留日本人が必ず心得ておくべき三つの大原則といわれている(タイ在留者心得三原則)。

「当社と取引があるタイの現地法人で働いている日本人駐在員たちのあいだでは、タイに住んでいる日本人はタイ人よりもタチが悪いといった評判がもっぱらであるため、当社もタイ在住の日本人を採用することは差し控えたい」

タイに住んでいる下流の日本語話者たちは、タイの日本人社会において、もはや日本人の体をなしていないと見なされている。少し極端すぎるような気もするが、タイにある、とある会社の現地法人で責任者を務めている日本人の駐在員が本国へ向けて発信した2008年2月度の報告書には、このような記述もあった。タイにおける下流の日本語話者たちによって構成されている社会は、異国において信頼を寄せることができる「タイの日本人社会」ではなく、危険な「タイにおける下流の日本語話者たちによる社会」といった位置づけにある。

タイに住んでいる下流の日本語話者たちは、深刻な貧困に直面している。バンコクの都内で働いているタイ人世帯の平均月収(32,284 バーツ, タイ統計局2006年)すら維持できなくなっているケースも珍しくはない。そのため、犯罪に手を染めてしまう可能性が高いばかりか、日本人としてのプライドを維持していくための過程において何らかの精神疾患にかかっていることもあるため、本当にあぶない。今後まっとうな「タイの日本人社会」で生活していくのなら、どうせ仕事や日常生活のなかで「下流の日本語話者たちによる社会」と接触する機会なんかほとんどないはずだから、この際、いっそのこと最初から完全無視を決め込んでしまったほうが無難かもしれない。

ちなみに、この心得を破って無茶をすると、サイアクの場合、命を落とすことにもなりかねないので注意したい。また、得体の知れない日本語話者に対して、自分の勤務先、住所、電話番号などの個人情報はゼッタイに教えてはならない。多少の図々しさがあれば、自分の名前を教えるのも避けたいところだ。相手が危険な人物であるか判断がつかない場合には、おもいきって家賃15,000バーツ未満の部屋に住んでいるタイ在住日本人を、一括りにしてバッサリと切り捨ててしまうのもひとつの方法だだろう。

そんな危険なのがウヨウヨしているようなアパートに、なにも好きこのんで住む必要はない。

午後7時、高架電車プロームポング駅の前にあるショッピングセンター The Emporium へ行って、元勤務先の日本人駐在員と会食した。その後、友人とふたたび合流した。

20080811-2@2x

午後10時半、スクンウィット15街路にある娼婦調達バーのトァーメーコーヒーショップへ友人と出かけた。この店は日本人観光客たちのあいだで知名度が高く、バンコクへ長期出張に来ている取引先との会話の中でも希に話題にのぼることがあるため、いちおう情報だけは最新のものにしておきたい。

「きょうは女の子の数、少ないわねえ」

ホテル「ルワムヂットプラザ」入口にある階段を下りて、その地階にあるトァーメーコーヒーショップへ約3年ぶりに入ってみた。3年前に来たときは客も娼婦も少ない廃れた陰気な店だったが、お盆休みを利用してバンコクに滞在している日本人の観光客が多いせいか、すっかり活気を取り戻していた。娼婦のワン(自称22歳)によると、これでも娼婦の数はいつもより少ないという。ディープなタイを満喫してもらうために、誰でもイイから娼婦をひとり友人に当てがおうと考えていたが、パッタヤー旅行の同伴1日につき3,000バーツとのことだったので友人が辞退した。

このとき、その場しのぎのため、いくつかの言葉を友人に教えた。

ขอเบอร์หน่อย(コーブーノーイ)
「電話番号、教えてよ」

พรุ่งนี้ผมจะมาใหม่น่ะครับ(プルングニーポムヂャマーマイナクラップ)
「明日また来ます」

午後11時半、日本人向けのカラオケスナックが密集しているタニヤ通りへ移動した。もともと日本人向けのカラオケスナックに上質な娼婦を求めること自体にムリがあったのかもしれないが、それでもあまりにも酷すぎたため、店を転々とする羽目になった。最後にたどり着いたのは、日本人向けのカラオケスナック Play Girl だった。いつものように「自称ラオス語話者」を指名して、タイ語のカラオケを熱唱した。その後、ヂャールムアング通りにあるラオス人の娼婦がいるカラオケスナック「ラオガンエーング」へ友人と行って、タイ語のカラオケを熱唱しつつ、ラオス文字も教わった。午前4時すぎ、友人がタクシーに乗るのを見届けてから、ひとりタクシーで帰宅した。

今晩はバンコクに滞在している友人が楽しむことを最優先させたため、無責任にも友人に娼婦を当てがおうと試みたが、バンコク留学生日記で再三触れているように、娼婦との性交渉には、ものすごく高いエイズ感染リスクが伴うため注意が必要となる。僕だったら、どんなにカネを積まれても娼婦との性交渉だけはお断りしたい。

ABOUTこの記事をかいた人

バンコク留学生日記の筆者。タイ国立チュラロンコーン大学文学部のタイ語集中講座、インテンシブタイ・プログラムを修了(2003年)。同大学の大学院で東南アジア学を専攻。文学修士(2006年)。現在は機械メーカーで労働組合の執行委員長を務めるかたわら、海外拠点向けの輸出貿易を担当。