セーンスック寺の地獄絵巻

「これは浮気者が堕ちると言われている地獄よ。浮気者は、死後に槍を持った鬼に追い回されて、トゲトゲのある木に登って逃れようとするんだけど、木の上からもカラスに眼を突かれて痛い目に遭うの。仏教における『永遠に続く身体的な苦痛』のことね」

この旅行に参加している友人の会社社長の妻で日本人向けのカラオケスナック「鹿鳴館」でホステスとして働いていた女性は、日頃から夫の浮気に悩まされているそうで、今回の旅行のコースにあえてこの寺を加えたという。もちろん冒頭にある台詞はその会社社長の友人に日本語に通訳して伝えるするように依頼された。

この説明の真偽についてはともかく、地獄という概念は世界中のほぼすべての宗教にあるという。

きょうはタイの憲法記念日で、官公庁や国立大学をはじめ、一部の民間企業も休みになった。僕は友人の会社社長に誘われて、とある建設会社の2泊3日の社員旅行に同行することになった。

午前9時に友人の会社社長が住んでいるコンドミニアムの前に集合し、クルマ2台に分乗してバンコクの近郊にあるビーチリゾート「パッタヤー」へ向かった。途中、チョンブリー県バーングセーンの漁港で昼食をとって、周辺にある寺院を参拝した。

バーングセーンの海岸から1kmほど離れたところにあるルワングポーネーンノーイ財団が建立したセーンスック寺は、そのなかでもとりわけ印象的だった。境内には地獄と天国の区画が設けられていて、人々に自省を促すための巨大な像が立ち並んでいる。「親に嘘をついている子どもがカラスに突かれて犬にかみつかれるシーン」を見せれば、子供たちは「もう絶対に嘘はつかない」と決意するかもしれない。入場料は無料。施設を維持するための寄付を募っている。

南パッタヤー海岸にある海鮮料理店「ナーングヌワン」で夕食をとり、酒に酔って夜の街へ繰り出していった友人たちと合流するために右往左往していたところで法定閉店時間の午前1時になり、結局リゾート地ならではの娯楽を楽しむことなくホテルへ戻った。

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バンコク留学生日記の筆者。タイ国立チュラロンコーン大学文学部のタイ語集中講座、インテンシブタイ・プログラムを修了(2003年)。同大学の大学院で東南アジア学を専攻。文学修士(2006年)。現在は機械メーカーで労働組合の執行委員長を務めるかたわら、海外拠点向けの輸出貿易を担当。