「ヌーの名前はなんて言ったかな?」
タイ語の人称代名詞はバラエティーに富んでいる。それぞれ自分と相手の関係に応じて、親しみを込めた表現、フォーマルな表現、キザな表現、ケンカ腰の表現など正しく使い分ける必要がある。相手との距離感をつかめず適切な表現が思いつかないときは、人称代名詞、特に二人称の使用を避けてやり過ごすように心がけている。
人称代名詞を決定するときの相手との距離感は、自分の意志とは無関係に決定される。たとえば、年長者が一人称に พี่ (ピー, お兄さん/お姉さん)を用いていたり、二人称に น้อง (ノーング)や ลูก (ルーク)を用いたりしている場合は、こちらもそれにならって相手のことを พี่ (ピー)と呼んで応じ、一方で相手が教科書通りのニュートラルな一人称 ผม (ポム, 男性の一人称)や ฉัน (チャン, 女性の一人称)を用いている場合には相手のことを คุณ (クン)と呼んで応じれば良い。
タイ語には หนู (ヌー)という一人称もある。一般には子供の頃から世話になっている親族などに対して用いられ、女性の場合には大学の教官や職場の上司に対して用いられることもある。ただし、最高度の謙譲の一人称 หนู (ヌー)が二人称として用いられるケースは非常に希で、通常は ลูก (ルーク)が用いられている。
ところが、きのう陸軍大将から依頼のあった資料を FAX するために電話をかけたところ、冒頭のような問いかけがあった。
なお、相手が特に社会的地位の高い(政府高官や会社社長などの)場合には、二人称 ท่าน (タン)と応じなければ失礼にあたるから要注意だ。