タイのアイドル

「あの人、有名なアイドルなんだけど気づいてた?」

僕たちがいつも居座っているスィーロム通りにある珈琲屋には、午前2時頃になるとアイドルのボーンルーンちゃん=ピンスダー・タンパイロ(22歳, ラングスィット大学マスコミ学部)がやってくる。彼女が出演している映画には、サユィウ(わくわくどきどき)、ヂャーオサーオパッタイ(タイ焼きそばの花嫁)、クムグラビー・ピーラバート(グラビー幽霊の氾濫)などがある。さわやかで元気いっぱいなイメージで売り出し中のアイドルだが、普段から僕たちが目撃しているのは、そのイメージとは正反対の、ナゾの中年男性との密会だ。

タイの芸能界にもタイ独特の階級社会の色彩がモロにあらわれている。日本の芸能界とは違って、タイの芸能人の学歴はおそろしく高い。さしずめ、金持ちによる趣味の一環といったイメージで、貧乏人の成り上がりなんかほとんどいない。友人から以前紹介してもらった映画俳優も名門国立大学の学生だったし(過去の日記に「友人」として登場している)、封建時代の地方領主の称号「ナ+地名」(2004年6月10日付日記参照)を名乗っている芸能人も多い。

タイの賜姓

2004.06.10

いま自分が通っているヂュラーロンゴーン大学の文学部や、その隣にある芸術学部にも芸能人がたくさん在籍しているという話だが、それっぽい自己主張もなければ気取った様子もないため、あまり目立っていない。

ボーンルーンちゃんの例からも分かるように、タイのアイドルは総じて芸能人であるという自覚に乏しい。きっと有名になる前からそれなりに良い生活をしているから、いまさら「わたしは VIP である」と主張する必要性なんか感じていないのだろう。

タイでは芸能人を身近に感じる機会がたくさんあるが、相対的にヘボい社会階層に属している僕たちのような一般的な日本人が相手にしてもらおうと期待するのは無茶が過ぎる。

きょうの昼休み、「寝不足のせいで右目のまぶたが痙攣する」とクラスメイトに相談したところ、タイでは「右まぶたの痙攣は幸運の予兆、左まぶたの痙攣は不運の予兆」という話だった。もし今晩のうちにペーパーが仕上がれば、その幸運に感謝したい。

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    バンコク留学生日記の筆者。タイ国立チュラロンコーン大学文学部のタイ語集中講座、インテンシブタイ・プログラムを修了(2003年)。同大学の大学院で東南アジア学を専攻。文学修士(2006年)。現在は機械メーカーで労働組合の執行委員長を務めるかたわら、海外拠点向けの輸出貿易を担当。