売春婦と麻薬の事情

夕食後、いつもの「ゴールデンコース」へ友人たちと出かけた。平日から性風俗関連の施設を徘徊するのはオヤジっぽくていけないが、どうせ酒の値段が同じなら売春婦をカラカイながらタイ語の習熟度を確認できる店のほうが有意義だ。この一挙両得の巡回ルートを友人たちはゴールデンコースと呼んでいる。

午前2時ころ、ゴールデンコースの終着地点であるホテル「サヤーム」に到着。フリーの売春婦と住居の話題になった。

「どこに住んでるの?」

「ラッチャダーピーセーク」

「もしかして、ソイ1のロータス裏にあるミーチャイマンション?」

「えっ? ・・・・・・なんで?」

「こういうところで働いてる人がたくさん住んでるし、ラッチャダーピーセーク通りにこれほど大きなマンションなんて他にないし。 1泊500バーツの中華系アパートでしょ?あのアパートにはスペシャルなものがあったよね?」

「うん。・・・・・・そうだけど何で知ってるの~? 1泊500バーツで1ヶ月4500バーツ。ホントまいったなあ」

と言いながら、アパートのカードキーをすんなり見せてくれた。名刺もゲット。

華人資本の巨大アパート「ミーチャイマンション」は、ソープランドや麻薬ディスコが立ち並ぶラッチャダーピセーク通りとアソークディンデーング通りの交差点付近にある。バンコクを代表する風俗街に近く麻薬(ヤーバー, 1錠100バーツ)が比較的容易に調達できることもあって、麻薬目的で働いている売春婦やオカマ、インド人麻薬常用者など特殊な住民たちが集住している。ヘビーな麻薬常用者は1日あたり7錠(日本円にして2100円分)程度を摂取しており、アパートの警備員や麻薬の売人たちも巻き込んでとにかく異常としか表現できないような日常を送っている。

มีชัยแมนชั่น
ミーチャイメーンチャン, ミーチャイマンション
522/163 ซอยสรางค์ ถ.อโศก-ดินแดง เขคดินแดง กรุงเทพฯ 10320
522/163 ソーイサラーング, タノンアソーク・ディンデーング, ケート・ディンデーング, グルングテープ
0-2248-7580

 

「とりあえず1晩2000バーツだけどどう?」

「ここの相場って2時間1500バーツでしょ?スクンウィット15が1000バーツ」

と切り返しておいたが、結局は宿題を理由に帰宅した。ただでさえこんなことに金を使うことに抵抗があるのに、そこに麻薬中毒者のエイズ感染リスクなんてものが加わってるなんて、まったくシャレにならない。

途中、地上波ITVでこのホテルの前で客待ちをしていた売春婦たちが一斉検挙されている様子がライブ中継され、店内の売春婦たちが総立ちになって警戒態勢に入るなどのハプニングもあったが、落ち着いてきた頃に説明を求めたところ、

「お店に入るとビールとか頼まなきゃいけないから、店の外で客待ちしてるコもけっこういるみたい。でも警察はホテルの中に入って来ないから、私たちはここのビールがセブンイレブンよりも高くてもここに来ているの」

と教えてくれた。このホテル、なかなかイイ商売をしているじゃないか。

【追記】冒頭にご紹介したアパートには警察が頻繁に踏み込んでいます。麻薬密売人たちは自分で麻薬を売っておきながら、密告報奨金ほしさに警察へ通報することがあります。特に外国人は問題解決能力が低く復讐の心配もないため格好の標的にされています。売春婦たちは裏の世界の人々との太いコネクションがあり、もし敵に回すと武器(青龍刀や拳銃等)を突きつけられるかもしれません。日本人も頻繁に逮捕されているようです。

ABOUTこの記事をかいた人

バンコク留学生日記の筆者。タイ国立チュラロンコーン大学文学部のタイ語集中講座、インテンシブタイ・プログラムを修了(2003年)。同大学の大学院で東南アジア学を専攻。文学修士(2006年)。現在は機械メーカーで労働組合の執行委員長を務めるかたわら、海外拠点向けの輸出貿易を担当。