あさ、当初の予定を変更して、独立行政法人国際協力機構(JICA)による政府開発援助(ODA)の事業を見学に行った。昨年のカンボジア旅行でも、現地ガイドの案内でクラスメイトたちとアンコールワット遺跡の修復事業を通じて日本の途上国援助について学んだが、今回はもう少し一般市民の視点に立って考えてみたい。
きょうは午前7時に起床した。眠い目を擦りながらホテルの朝食ビュッフェを平らげ、追い立てられるように食堂をあとにした。その後、ロビーで待っていたJICAのミャンマー人スタッフの案内で、マンダレー市の郊外にある寺院へ向かった。
そこで目にしたのは、後進国の田舎にありがちな寺院に併設されている仮設の教室で、木の柱のうえに屋根が乗っかっているだけの掘っ立て小屋だった。雨風をしのげるほどの施設ではない。教室は3つあるが、それぞれのあいだに仕切りはなく、緑色のおそろいのロンヂーをはいている休暇中の若手の教員たちが、普段学校へ行くことができない子供たちのために来て、ここで教育を施している。
教員によると、マンダレーの市内に張り巡らされているバス路線はここまで来ていないし、自動車の普及率もかなり低いため、都市部の郊外では学校へ行くための交通手段がなく、教育を受けられない子供たちがたくさんいるという。しかし、この取り組みは、教育が受けられない子供たちに対して十分な環境を整えることではなく、最悪な状況をいくらかマシにすることを目的としており、仮設教室を運営するための費用はすべて寄付によってまかなわれているという。JICAの職員がこの事業になぜ関わっているのかについては結局分からずじまいだった。
ひととおり仮設教室についての説明を受けてから、正体不明な中華料理と不味そうなホットミルクコーヒーを前にして、この寺の僧に事業の詳細を尋ねた。最後に寄付を募る箱が回ってきて、今回のもてなしの真意を理解した。なんだか少し横暴すぎるようにも思えたが、仕方なく財布のなかから1ドル札を取り出して募金箱に突っ込んだ。
その後、遊覧船や木製の小船でマンダレー市郊外にある寺院をめぐり、夕方には飛行機で首都ヤンゴンまで戻ってヤンゴン随一といわれる中華料理店で夕食を満喫した。当初の予定では先日と同じユザナホテルに泊まることになっていたが、僕たちを乗せた観光バスがミャンマー最高級のホテル Traders へ入っていくと、車内から大きな歓声が沸き起こった。
ニタニタとしている主任教授が僕のほうを見て「ホテルがヘボいという苦情があったから、仕方なく今晩は君のために5つ星のホテルを用意したんだよ。これでまた予算オーバーになるけど、まあ仕方ないか」と話し、隣の席にいたクラスメイトが「みんなを代表して、ちゃんとお礼を言っておいてね」と僕に耳打ちしてきた。
みんな、あまりにもちゃっかりしすぎている。こうして、今晩もいつもと変わらぬプールサイドでの飲み会が始まった。