「バンコクにおける新卒者の給与は、5年前と比較すると、明らかに下がっているわ。以前は15,000バーツで雇ってくれる会社なんていくらでもあったのに、いまじゃ12,000バーツまで妥協しても、いい仕事なんかちっともない」
3月から4月にかけてミャンマーへ旅行に行ったり日本へ一時帰国したりと忙しくしていたあいだに、タイの大学では卒業のシーズンを迎えていた。友人たちの就職状況は予想以上に悪く、上位私大の工学部を卒業して幸運にも就職できた友人は、給与水準の低下によるミスマッチについてこのように話していた。
ことし卒業したばかりの友人たちは次のように話している。
「みんな月給15,000バーツの仕事ぐらい簡単にゲットしているのに、なんで私だけが就職できていないのかしら。このまえの面接では『人事管理を専攻していたのなら優秀な人材を雇って自分で会社を興してみたらどうだ?』なんて言われる始末だし。このままでは、本当に自分で商売を始めるしかなくなるかもね」(マヒドン大学経営学部卒)
「どうせ仕事なんて探したところで見つかりやしないんだから、とりあえずプリティー(日給500~800バーツのキャンペーンガール)のバイトをしながら、いまは専門学校に通って3Dグラフィックスの勉強をしているところ。仕事はまあ、おいおい腰を据えて探すことにするわ」(ラーチャパット・スワンスナンター大学工学部卒)
「卒業制作のためにしばらく仕事を休んでいたけれど、卒業が認定されたあとは以前と同じところで働いているわ。月収は15,000バーツぐらい。でも、昼間の仕事も同時にすれば、もっと効率よく稼げるようになるでしょうね」(日本人向けのカラオケスナックで働いているラッタナバンディット大学商学部卒のホステス)
人材紹介会社で働いていた経験がある日本人の友人は、タイの給与水準について次のように話している。
「職務経験が3年程度ある大卒者なら月給22,000バーツから25,000バーツが妥当なところ」
バンコクにおける日本人現地採用者の平均月給(中央値)が40,000バーツ前後といわれているから、タイ人大卒者の所得もそう悪くはない。
ちなみに、タイには終身雇用という概念もなければ、卒業したらすぐに働かなければならないといった風潮もないため、卒業後1年程度の充電期間を経てから働き始めるケースも少なくない。
夕方、バンコクで一番バンコクらしくない街「カーオサーン」にあるタイ料理店「トムヤムグング」へ行って、コンピュータシステムの販売会社で働いている友人のほか、就職活動中の友人2人と夕食をとった。