約束を断るときには

「とりあえず、最初のうちは『あとで行く』と答えておくの。そうしてジリジリと引き延ばしておいて、最後に『やっぱりムリ』と宣言すれば確実に断ることができるわ。夜遅くになれば、『危険で行けない』とか、いろいろな言い訳が使えるようになるから」

スクンウィット5街路にあるスーパー Food Land 2階のタイ料理屋で、タイ人の友人たち3人と夕食をとっていたところ、そのうちのひとりがなかなか巧妙なことを話していた。タイ版国民国家論の Siam Mapped の著者であるトングチャイ・ウィニッヂャグンが「曖昧さを重んじる文化」と表現していたように、タイには他人の事情についてあまり詮索してはいけないといったルールがある。しかも、バンコクでは強姦などの女性を狙った事件も少なくないため、深夜の外出を無理強いするのは難しい。

逆の立場になって考えてみれば、もし自分が相手からの回答を引き延ばしにされていたら、それはすでに拒否されることが確定していると考えて、ほかの予定を入れるなどして身構えておくべきだろう。

この友人は今晩、友人の友人のグループという、自分とはちょっと縁遠い人たちと、ラッチャダーピセーク4街路にあるパブ街へ遊びに行く約束をしていたという。しかし、雨季の大雨のなか、親しくもない友人たちに会いに行くのが億劫になってしまったらしい。

僕自身も、あまり気乗りしないときには ขอคิดก่อน(ちょっと考えさせて)と答えるようにしている。ときどき「それってNOってことでしょう?」と突っ込まれるときもあるが、それでも拒否の態度を明確に示すことなく、同じ相手から同じ質問を繰り返されるのも回避できるため重宝している。

ABOUTこの記事をかいた人

バンコク留学生日記の筆者。タイ国立チュラロンコーン大学文学部のタイ語集中講座、インテンシブタイ・プログラムを修了(2003年)。同大学の大学院で東南アジア学を専攻。文学修士(2006年)。現在は機械メーカーで労働組合の執行委員長を務めるかたわら、海外拠点向けの輸出貿易を担当。