賢者のタクシー停車場

「こんなところに『タクシースタンド』なんか作ったところで、いったい何の役に立つというのか。みんな歩くのがイヤでタクシーに乗っているんだろう? それなら、こんなところで俺たちが客待ちをしていたところで、どうせ誰も来やしないさ。こんなことに使うためのカネがあるのなら、タクシーの運転手に毎月15,000バーツの収入を保障してくれないかなあ。さらに、タクシースタンド以外での乗降車を禁止するという法律を作って徹底させてくれれば、協力してやってもいいけど」

午後、ヂュラーロンゴーン大学へ行く途中に、プララームヌング通り(ラーマ1世通り)沿いにある国家警察本部の前あたりに差し掛かったところ、「賢者のタクシー停車場」という触れ込みで新たに設置されたばかりのタクシースタンドを見て、タクシーの運転手がそうこぼした。

ここのところ、バンコクの都心部ではバス停のようなタクシースタンドが次々と設置されている。このプロジェクトは、バンコク都知事のアピラック・ゴーサヨーティン(任期2004.2-)の選挙公約により実現したものだが、タクシーの運転手が話していたように、わざわざ指定された場所まで歩いてからタクシーに乗る客なんているはずがないから、どうせ無駄に終わることが目に見えている(2007年4月追記:ついにタクシースタンドの廃止が決定されました)。

ヂュラーロンゴーン大学の文学部4号館にあるタイ・東南アジア学研究所へ行って、教官からペーパーについてアドバイスをもらってから、友人たちがいるスィーロム通り沿いにある珈琲屋 Bug and Bee へ向かった。午後10時まで難解を極める社会人類学系の論文を読み、その後、スィーロム19街路にある小籠包屋「永和豆腐」へ行って夕食をとった。

ちなみに、タイではタクシーの運転手は貧困の代名詞となっており、月給15,000バーツなど夢のまた夢のおとぎ話だ。

またしてもタームペーパーのシーズンに突入し、課外活動の縮小を余儀なくされている。

ABOUTこの記事をかいた人

バンコク留学生日記の筆者。タイ国立チュラロンコーン大学文学部のタイ語集中講座、インテンシブタイ・プログラムを修了(2003年)。同大学の大学院で東南アジア学を専攻。文学修士(2006年)。現在は機械メーカーで労働組合の執行委員長を務めるかたわら、海外拠点向けの輸出貿易を担当。