「語尾の น่ะ は女の子だったら可愛らしくて良いかもしれないけど、男性が多用しすぎると相手にオカマのような印象を与えるわよ。この表現を男性が連続して使えるのは恋人に何かをネダるときくらいじゃないかしら? わたしがカレシに使ったら『熱あんのか?』って聞かれるわ。どうしても使いたいのなら、 น่ะ のあとに ครับ を付けて น่ะครับ とした方が良いと思う」
きょうヂュラーロンゴーン大学文学部主催の集中タイ語講座で語尾につける น่ะ の用法について女性講師が説明してくれた。
これまでタニヤ大学(ホステスに中途半端なタイ語を教えてもらうことができる日本人向け歓楽街タニヤにあるカラオケスナック)の日本人オヤジ特有のタイ語表現には強い違和感があったが、その理由がついに分かった。
タイ語の習熟度の低い日本人がタイ語を話すときには、逐次的に単語単位で日本語をタイ語に置き換えていくという作業が必要となる。日本人中年男性はできるだけホステスに優しく接したいと考えていることもあって語尾に「だよ」などの語調を和らげる効果がある言葉を付けたがるようだけど、そもそも日本語と同じ手法でタイ語の語調を和らげようという発想そのものが誤っている(日本語とタイ語では丁寧語「です・ます」の言語的な価値観や用法だって全然違う)。
初心者向けのタイ語解説書には、語調を和らげる語として น่ะ という語が紹介されている。
しかしこの น่ะ という語は、相手に反論を許さずに自分の主張を押し通すときに用いられることもあるため、多用しすぎると聞き手に説教臭い印象を与える。もちろん語調を和らげるという辞書どおりの用法もあるが、前者の น่ะ と区別するためにあえて陽気に発声する必要がある。必然的に可愛らしさが強調されることになるため、いい歳をしたオヤジが多用しすぎるとオカマのようなキモい印象を相手に与える。
たとえば「きょうはとても暑いよねー」なら วันนี้ร้อนมาก で十分だけど、あえて人間的な親しみを全面に押し出したいのなら ร้อน の部分で速度を落として抑揚を強調するだけでよい。どうしても語調を和らげるための語を語尾に付けたいのなら น่ะ ではなく เนอะ のほうがまだマシだ。タイ語の習熟度の低い日本人にありがちな感覚で語尾に น่ะ を付け加えてしまうと、「きょうオレはとても暑かったんだ。涼しかったなんて言わせねえぜ!」と自分の感想を強要しているかのような印象を聞き手に与える。もちろんホステスだってあまり良い気はしないだろう。いちばんネイティブっぽい表現は วันนี้ร้อนมากเลยอ่ะ か。
日本人中年男性が話すタイ語のクセは日本人向けのカラオケスナックで働いているホステスたちなら分かって当然だが、そのタニヤオヤジ的なタイ語が世間一般のタイ人にも通じると思うのは勘違いも甚だしい。サイアクの場合、上記のように自分が意図しているメッセージとは正反対のメッセージとして相手に伝わってしまう。
語尾に不適切な単語を付け加えるぐらいならむしろ何も付けない方がよほどマシだ。一番無難なのは、変にタイ語通ぶらずに、 素直に ครับ を語尾に付けておくこと。
タイ語学習340日目にしてタニヤオヤジたちのタイ語が不自然に聞こえる理由がやっと解った。