はじめてのチップ (LA留学生日記より)

はじめての一人行動。些細なことひとつひとつがまるで究極の選択のように悩ましい。

きのうまではすべて高校時代の友人が面倒を見てくれていた。ところが昨晩から別行動をとっているため、当面は自分の判断で行動しなければならない。

午前6時半、ホテルから徒歩5分のファミリーレストラン「デニーズ」で朝食をとった。注文したのは All American Breakfast (6.95ドル)とオレンジジュース。テーブルの上に置かれた伝票には合計8.43ドルと書いてあった。詳しく読んでみると、「クレジットカードでお支払いになるお客様は、以下の欄にチップ額と総額をご記入ください」とある。しかしチップをいくら払えばよいのか。

これまで友人から聞いた話をまとめると、チップは①原則として請求額の15%、②高級店なら20%でもいい、③ファーストフード店では払わなくてもよい、とのことだった。

デニーズはサーバーがいる普通のレストラン。チップを払わなければならない。請求額は8.43ドル。これにチップ15%を加えると合計10.85ドルになる。できるだけキャッシュは残したくないから、クレジットカードではなくキャッシュで支払いたい。どう払えばよいだろうか。

① 細かいことは気にせず相場の金額に15セント上乗せした11ドルを支払う。
② 25セント硬貨を駆使して10.75ドルを支払う。
③ 1セント硬貨を駆使してピッタリ10.85ドル支払う。

ポケットに手を突っ込んでみたところ、手持ちの硬貨では85セントが作れないと分かった。③の選択肢はなくなった。そこで無難に①11ドル支払って店を出た。

これで良かったのだろうか?

つぎの難関はホテルのチェックアウトだった。宿泊料金にもチップを支払うべきか? 請求書を前に困り果ててレセプションに「チップの額はどの欄に書けばいいですか?」と聞いてしまった。

「ノー」

いま思えば赤面するほど恥ずかしいけれど、ホントウにチップを払うべきなのか分からなかったのだから仕方ない。空港で合流した友人によると「カウンターの中にいる人にはチップを払わなくても良い」という。

チェックアウトしてからホテルが用意してくれたシャトルバスで空港へ向かった。このとき運転手が旅行カバンを荷台に乗せてくれた。これにもチップを払う必要があるのか? とうとう考えるのが面倒になって空港で運転手に1ドル渡してバスから降りた。もしかしたら少なすぎたかもしれないけれど、渡さないよりはマシだろうし、無料バスに5ドルも払うのはバカバカしい。この1ドルが正解だったのかどうか結局わからないままだ。

ロサンゼルス空港で合流した友人から座席のアップグレード券をもらってビジネスクラスで帰国した。きょうの日記はその機内で書いている。成田空港に到着するまであと4時間13分かかるらしい。

ABOUTこの記事をかいた人

バンコク留学生日記の筆者。タイ国立チュラロンコーン大学文学部のタイ語集中講座、インテンシブタイ・プログラムを修了(2003年)。同大学の大学院で東南アジア学を専攻。文学修士(2006年)。現在は機械メーカーで労働組合の執行委員長を務めるかたわら、海外拠点向けの輸出貿易を担当。