徒労感だけが残るプレゼンテーションだった。
午前中の「東南アジア研究の方法論」ではタイの政治と国軍の関係についての講義を受けた。講義の構成と講師の英文法がメチャクチャなことになっていた。そして午後の講義「近代東南アジアの植民地主義・民族主義と民主化」で数日前から準備してきたプレゼンテーションを発表した。
プレゼンテーションは、1グループ10分と決められていた。だから時間内で終わらせるために簡単な内容にしておいたけど、ほかの学生は何十分も話し続けていた。僕が講師の英語を聞き間違えたのか、それともほかの学生が制限時間に無頓着なだけだったのか。
課題は「東南アジア圏内の任意の国の国民意識の特徴について」だった。特にフィリピン人の学生からは、第2次大戦時の日本の占領政策について25分間に渡って口汚く罵られた。この学生によると、今日のフィリピンにおける貧困問題は全部日本のせいだという。近くの席に座っていたタイ人やカンボジア人からは、何度も同情のサインが送られてきた。
そのとき僕にできたのは沈黙だけだった。