午後4時、午後の講座「東南アジアにおける近代化・民主化・民族主義」を受けてから帰宅する途中に突然のクルマのトラブルに見舞われた。
普段、ヂュラーロンゴーン大学へ行くときは、スクンウィット13街路にあるコンドミニアム「スクンウィットスイート」から、高架電車サヤーム駅の高架下をくぐって、マーブンクローングセンター前の交差点を左折して、パヤータイ通りを南下するルートを使っている。高架電車プルーンヂット駅前が一方通行のため、復路は往路とは別の道を使わなければならない。
大学からコンドミニアムへ戻る道は2通りある。ひとつは、パヤータイ通りを北上し、右折禁止の高架電車ラーチャテーウィー駅前交差点を直進。高架電車アヌサーワリーチャイサモーラプーム駅(戦勝記念塔駅)前のロータリーで転回して、再びラーチャテーウィー駅前交差点へ戻り、ペッブリー通りへ入るルート(復路北ルート)。もうひとつは、大学の南側にあるプララームスィー通り(ラーマ4世)を東へ行き、クローングトゥーイ交差点を左折してラッチャダーピセーク通りへ入るルート(復路南ルート)がある。復路南ルートを使うとバンコクの渋滞名所「アソーク交差点」で1時間以上も身動きがとれなくなってしまうため、復路北ルートで帰宅している。
クルマは戦勝記念塔前ロータリーあたりから調子がおかしくなった。アクセルを踏んで回転数をある程度維持しておかないとエンジンが止まってしまう。パヤータイ駅を通過する頃になるとエンジンが頻繁に停止するようになり、ついにラーチャテーウィー交差点の手前でエンジンが再始動できなくなって道路の真ん中で立ち往生した。
ハザードを出してクルマから降りた。ボンネットを開いて、見ても分かるはずもない自動車部品を眺め腕を組みながら途方に暮れていたところ、20歳代前半のタイ人がクルマから降りて声をかけてきた。
「とりあえず私がクルマを押しますから、運転席に戻ってエンジンをかけてみてください」
こうして、親切なタイ人青年の助けもあって、再びエンジンを始動することができた。その後も、エンジンが不安定な状況は続き、バンコクの電脳街「パンティッププラザ」の前でエンジンが停止してしまったが、交通整理にあたっていた警官に手伝ってもらうなどして、なんとかスクンウィット22街路にある自動車整備工場までたどり着いた。
「この年式の BMW318 にはよくある故障なんですよ。エンジンの隣にくっついているエンジン回転数を制御する部品、エアフローメーターと呼ばれている部品ですが、これに問題があるに違いありません。実は、私もこれと同タイプの車に乗っているのですが、まったく同じ故障を経験したことがあります。単なる電気系統のショートなら修理だけで済みますが、エアフローメーターの故障なら交換する必要になります。いずれにしても、明日また電話しますのでそれまでお待ちください」
自動車整備工場にクルマを預けるのはあまり乗り気ではなかった。以前、「自動車修理工場が勝手に状態のいい部品を取り出して状態の悪い部品に交換し、取り出した部品を売りさばいている」という話を聞いたことがあるからだ。しかし、いくら心配でも、ここからクルマを運転して帰宅するのは不可能だったから、念のためにエンジンルームの写真を撮影して引き揚げた。