午後11時半、マヒドン大学サーラーヤー校舎へブワを迎えに行ってから、自動車整備工場で指摘された自賠責保険を支払うためにスクンウィット101街路にある運輸省陸運局バンコク第3地区事務所へ出かけた。
運輸事務所の受付カウンターに書かれていた指示にしたがって、階段を上って2階の17番カウンターへ行き、パスポートと自動車所有者証(タビアンロット)を提出したところ、受付カウンターへ行って整理券をもらうよう指示されたので、受付カウンターの職員に自動車所有検証を提示した。
「あら?あなたの自動車税納入期限は4ヶ月後の4月18日よ。納税は3ヶ月前までからできるけど、それでもまだあと1ヶ月もあるわ」
しかし、このまま追い返されてしまっては、自賠責保険の更新もできないまま、違法な状態で運転し続けることになる。そこで、同行したブワが、
「えーっと、なんという名前か知らないんですが、フロントガラスにくっついているステッカーのうち、正方形のものに2546って書いてあるんです。これって、2546年(西暦2003年)まで有効ってことですよね? ってことは・・・・・・」
と言ったところで、さっきまで「何がなんだか分からない」といった顔をしていた職員が急に笑顔になった。
「ああ、 พ.ร.บ. の更新に来たのね。自動車所有者証に書かれていた納税期限に近かったものだから、てっきり納税に来たものと勘違いしてしまったじゃないの。じゃあ、席に座って10分くらい待っててね。料金は860バーツよ」
待合室のベンチで、僕はブワに「 พ.ร.บ. 」が何の略語なのか聞いてみた。
「え? 『 พ.ร.บ. 』って、『 พระราชบัญญัติ 』の略なんじゃないの?」
たしかに、 พ.ร.บ. は「法律」の略語だけど、それを書類の名称に用いるのでは訳が分からない。そこで「 ประกันภัยยางยนต์บังคับ (強制車両保険)」の略なのではないかと聞いてみたところ、「私には ป (p音)ではなく、พ (ph音)に聞こえたけどなあ」といったカンジで、結局 พ.ร.บ. の真の意味を知ることはできなかった。
「まあ、職員が『 พ.ร.บ. 』って言っているんだし、 พ.ร.บ. とだけ覚えておけばいいんじゃない?」
ということで決着した。タイ語の略語には意味不明なものが多い。
ところで、この年間掛金860バーツの自賠責保険の保障内容は、①交通事故で第三者を怪我させてしまった場合ひとりにつき最高50,000バーツ(免責15,000バーツ)、②死亡させてしまった場合、ひとりにつき最高100,000バーツ(免責35,000バーツ)が被害者または被害者の親族に支払われる。
タイで交通事故に巻き込まれて命を落としたとしても、日本円にして28万円以上の補償を期待するのは難しい。ここは歩行者優先ではない弱肉強食の国だ。常日頃からクルマにひき殺されないように最大限の注意は払っておきたい。