学生の派閥化と反目の顕在化

東南アジア研究科は、まさに人種の坩堝。

ヂュラーロンゴーン大学は、タイの首都バンコクにある。タイ人の学生がクラスの約半数を占めており、彼らのあいだでは入学年度別、出身大学別の派閥化が進んでいる。外国人学生のあいだにも母国語別、奨学金支給団体別の派閥がある。

僕は、タイ国内の大学を卒業したわけでもなく、英語を母国語としているわけでもなく、奨学金を受けているわけでもない。だから、どの派閥とも深いかかわりを持っていない。それでも、比較的オープンな、同期入学のガセートサート大閥や奨学生閥の学生たちとは仲良くやっている。比較的英語を苦手とする学生たちで、僕としてはタイ語でのコミュニケーションがとりやすいという点で都合が良い。

これまでクラスメイトたちのプライバシーについてはまったく関心を持ってこなかった。クラスに派閥があるなんて夢にも思ってはいなかった。

クラスメイトの行動パターンも十人十色で、放課後に主任教官のもとへ足繁く通って自分の評価を上げようと必死な学生、先輩が別の講座で提出した小論文(ペーパー)をコピーしていてそのまま提出しようとする学生、教授から勧められた専門書を昼夜読みふけってばかりいる学生、毎晩のようにハイソな若者向けのパブに通っている学生など、本当にバラエティーに富んでいる。

クラスメイトから「互いに対立している派閥の両方と仲良くしようと振る舞うのはあまり賢明じゃない」とアドバイスを受けた。どちらの側に付くのか態度を明らかにする必要があるらしい。これまでもっぱら「広く浅く愛想良く」という方針のもと行動していたけれど、これからは教授陣からの評判が悪いタンマサート大学閥の学生たちからは距離を置こうと思う。

昼過ぎ、高架電車 BTS チットロム駅前にあるセントラル百貨店でタイ人クラスメイトと待ち合わせ、ペーパー小論文の書き方についてアドバイスをもらった。その後、クラスメイトたちのゴシップなどを聞いていたところ、一見仲良くやっているように見えるタイ人学生たちのあいだに、反目と対立があることをはじめて知った。

今日の日記の表題を「学生の派閥化と反目の顕在化」としたけれど、実は以前から存在していて僕が今日まで知らなかっただけのようだ。

ABOUTこの記事をかいた人

バンコク留学生日記の筆者。タイ国立チュラロンコーン大学文学部のタイ語集中講座、インテンシブタイ・プログラムを修了(2003年)。同大学の大学院で東南アジア学を専攻。文学修士(2006年)。現在は機械メーカーで労働組合の執行委員長を務めるかたわら、海外拠点向けの輸出貿易を担当。