バンコクの夜の街が、もし本当に日本人が考えているようなエキサイティングな場所だったら、きっと1,000万人のバンコク市民たちで毎晩のようにごった返していることだろう。
僕がいま住んでいるコンドミニアム Sukhumvit Suite は、夜の風俗街 Nana Entertainment Plaza からちょうど900メートル(徒歩10分)のところにある。しかし、深夜にこの界隈を歩いているタイ人はせいぜい屋台の売り子か娼婦ぐらいのもので、それ以外のタイ人を見かけることはほとんどいない。
それもそのはず。ゴーゴーバーの舞台で水着姿で踊っている娼婦を眺めるのも、カラオケスナックで子持ちの娼婦と密着しながらマイクを持って歌うのも、何回か体験すればすぐに飽きてしまう類いの娯楽なので、そんな場所に毎日のように通い続けられるはずもなく、都内の歓楽街は自然と外国人観光客(およびそれと同等の現地在住外国人)ばかりになる。
僕のバイト先へ現地採用待遇で数日前に入社したばかりの新卒の日本人従業員が一度もバンコクに来たことがないというので驚かせてやろうと、僕と友人でこの新人を Nana Entertainment Plaza へ連れて行った。
僕たち3人組は Rainbow 2 というゴーゴーバーに入り、店員の指示にしたがってソファー席に陣取って、ポールダンスがある舞台の上で水着姿で踊る娼婦たちを無感動に眺めていた。ところが新入社員にとっては始めての経験。有料セックスを終えて店に戻ってきた私服の娼婦を指差して、「彼女たちはシロウトなんですか?」と聞いてきた。突拍子もない疑問の数々は、僕たちをタイ在住者を大いに楽しませてくれた。新入社員の新鮮な反応を見ているうちに、自分たちも次第にタイに来たばかりの頃を思い出し、悪ふざけをしながら久々にゴーゴーバー堪能した。非日常の感動。それがゴーゴーバーの醍醐味かもしれない。
ところで、外国人観光客に人気の性風俗といえばゴーゴーバーだが、現地のタイ人たちは幅広い選択肢から一番自分に合った施設に通っている。タイ風俗発祥の地と言われているスッティサーンウィニッヂャイ通りに点在しているタイ人向けのゴーゴーバーはあまり流行っていない。タイ人にはカラオケスナックやキャバレーなどが人気のようで、主に企業間の接待に用いられるという。タニヤ通りにある日本人向けのカラオケスナックとは違って料理も出てくるのがウレシイ。郊外へ行けば日本人に知られていないようなマッサージパーラー(ソープランド)もたくさんある。新ペッブリー通りにあるサヤームホテルには若くて可愛い娘が多く、タイ人買売春愛好家たちのあいだでも根強い人気があるそうだ。