日本人愛国主義者説。タイ人とフツウにコミュニケーションがとれる日本人であれば、バンコク生活のなかで一度は聞く仮説もしくは風評だ。その根拠は、日本人が日本製品をこよなく愛し、日本国に対して絶対の自信を持っていることとされている。
個人的には、この仮説は間違っていると思う。一億層中流と信じている日本人が、単に「自分は中流である」という夢や妄想を満たすために、自分以下の人を見つけては差別的に扱うことに喜びを見いだしているにすぎないのではないか。本当は「日本人は愛国主義者などではなく排他的な差別愛好家なんだ」と自分の意見をストレートにぶつけてみたいところだったけれど、まさか国力に大きな隔たりがある国の人々にこのような主張を唱えられるはずもなく、タイ人にこの仮説を聞かされるたびに僕はいつも俯いて黙り込んでいる。
今日の遺跡はつぎの7ヶ所。アーナーヂャック・ナコーントム(アンコールトム)、プラーサート・バーヨン、ワット・トーリーゲート、プラーサート・チャルング、ピマーンアーガート、プラーサート・テープパノム、プラーサート・プラーサート・プレーパリライ。すでに忘却の彼方にある遺跡も何カ所かあるが、僕のメモによると今回のカンボジア遺跡調査旅行では少なくとも25の遺跡を回った。クラスメイトたちも遺跡にはもうウンザリといった様子で、研究者(カンボジア考古学)の解説を無視してダラダラと無駄話ばかりをしている。
今回の遺跡めぐりについて、タイ人クラスメイトはこう話している。
「まだ徴兵されて軍事教練を受けていた方がマシだ。機関銃をぶっ放してさえいればいいから、こんな長時間も直射日光にさらされることはないし、こんな長距離を歩かされることもない」
今回のカンボジア旅行で僕はすっかり日に焼けてしてしまった。一見しただけではタイ人との見分けが付かないかも。