タイの大学生のあいだで流行っている制服の着こなしについて、突き詰めて考えてみるとなかなか興味深い。
大学生の制服にはそれぞれの個性が表現されている。思い返せば、昨年同棲していたエーン(タンマサート大学中退⇒ラームカムヘーング大学編入)はスリットの入ったチャイナドレスのような黒いスカートをはいていた。一方で、ブワ(マヒドン大学)は標準的な国立大学スタイルをしていることが多い。先週の日曜日にブワが「ボディコンブラウスは胸を張ったときにボタンが飛んでしまいそうだからやめとくけど、腰ばきスカートは始めてみたいかも」と話していたので、腰ばきはダサいからやめておけと言って反対しておいた。しかし、僕が通っているヂュラーロンゴーン大学にも、腰ばきスカートという新しい流行の波は確実に押し寄せてきている。
そこで昨日、教室に戻る途中の文学部第4号館の階段で、23歳のクラスメイト3人(ヂュラーロンゴーン大学政治学部卒,ガセートサート大学人文学部卒,コーンゲン大学法学部卒)に、昨今の腰ばきスカートの流行について尋ねてみた。
「以前はミニスカートが主流だったけど、ここ数年はどんどん膝丈が伸びる傾向にあって、ついにスカートの裾が膝下まで降りてきてしまったの。それじゃスカート丈が長すぎてダサいということになって、年始あたりから今度はベルトの位置が下降するようになってきているみたい。今じゃ腰より下でスカートをはいている学生もけっこういるはずよ」
「たしかに、この流行が爆発的に流行したのは今年に入ってからよ。だって私が学部生だった頃にはこういった着こなしは全く見なかったもの」
「タイのファッションは常に日本の流行を追いかけているんだから、こういう経緯については日本人の君の方が詳しいんじゃないのか?」
バンコク大学に通っている別の現役大学生はつぎのように話している。
「それを聞くってことはもう見たってことよね? かわいくてイイカンジでしょ?」
個人的には、ファッションに無関心な人が寝起きにスカートを間違えて履いたまま学校に来てしまったかのような間抜けな印象しかないが、どうやらタイ人のあいだでは腰ばきスカートが「カワイイ」ということになっていて、しかも流行として社会的に認知されているようだ。
この2週間ほど、いろんな大学を訪れては学生たちのファッションを比較して楽しんでいる僕たち大学探検隊は、午後1時に高架電車エーガマイ駅前で集合して、今回で4回目となる大学めぐりへ出かけた。
日没後、ここのところ定番となっているホーガーンカータイ大学の前にあるパブ街へ行って、いつもに増して盛り上がりながらウイスキーを浴びるように飲んだ。常連として見なされるようになって、学生たちとも気軽に挨拶を交わせるようになった。
バンコク在住2年目を迎え、今回の一連の大学めぐりをきっかけにようやく「夜の街デビュー」した。老いてから悔いるのも釈然としないから、今のうちにバンコクの学生街を一通り回っておきたい。
バンコク留学を始めた頃には、まさか夜の街での店員から泥酔したタイ人女子学生を預けられ、さらに他大学のタイ人男子学生のところまで運んでいくように依頼されることになろうとは、夢にも思ってもみなかった。それでも、こうすることで他のテーブルにいる学生たちとも仲良しになれるのだから案外悪くない役回りかもしれない。