タイ人女性のアダルトビデオ出演と人権問題

朝、タイ研究科の講座「タイ史博物館論」が再びタイ国立博物館で行われた。館内に展示されている仏像について説明を受けていたところ、スィンラパゴーン大学で考古学部長を務めている担当講師から少し離れたところをダラダラと歩いているミーハーなクラスメイトたちのあいだで、一風変わったゴシップが話題になっていた。

バンコク都スワンルワング区に住んでいる AV 女優のネットちゃん=ゲートサリン・チャイチャルームポン容疑者(19歳)が今朝未明、わいせつ VCD 製造の共犯として警察に逮捕された。けさのニュースを見たクラスメイトたちのあいだでは、早くも「ネットちゃんは本当にカワイイか?」といった議論が交わされている。あるクラスメイトによると、これまでも数多くのタイ人女性がアダルトビデオに出演してきたが、そのほとんどが偽名を使っていたのに対して、この容疑者は「ネット=ゲートサリン」という本名で売り出していたため足がついて、今回の逮捕につながったという。

ネットちゃんの写真は、まるで有名アイドルのスキャンダルのように新聞各紙の第一面を飾っている。テレビの討論番組では「実名報道の正当性と弊害」についての話題が取り沙汰され物議を醸している。タイ人の名字は、日本人とは違って別の家系と共有して用いられることがないため、今回の実名報道によって家族や親戚が「 AV 女優の一族」として世間からの好奇の目に晒され、学校や職場へ行けなくなるなどの実害を被っているという。

2004年7月29日付の日刊紙「コムチャットルック」によると、ネットちゃんが出演したのは「モーラー」と「彼女はエーン」の2本。記事には「ノーング・ネット」と書かれていてマジでちゃん付けになっている。警察の取り調べに対して、自分は騙されて性行為しているところを撮影されたと主張しているという。しかし、演技があまりにも過剰である点や出演したタイトルが複数ある点などを根拠に、警察側は公判を維持できると考えているようだ。

第一地区弁護士評議会の委員によると、ネットちゃんの容疑は「タイ刑法287条、営利目的わいせつ」にあたり、3年以下の懲役または6,000バーツの罰金、もしくはその両方を科せられる可能性があるという。しかし、ネットちゃんが自らの罪を認めれば、罰金を支払うだけですぐに自由の身になれるといった見方が有力視されている。

余談だが、ネットちゃんが出演したアダルトビデオ VCD の価格は、今回の逮捕報道以降高騰しており、通常80~100バーツで売られているものが200バーツ前後で取引されているという。

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バンコク留学生日記の筆者。タイ国立チュラロンコーン大学文学部のタイ語集中講座、インテンシブタイ・プログラムを修了(2003年)。同大学の大学院で東南アジア学を専攻。文学修士(2006年)。現在は機械メーカーで労働組合の執行委員長を務めるかたわら、海外拠点向けの輸出貿易を担当。