ペーパーの提出期限が間近に迫っている。執筆作業は、ひっきりなしに音を立てるMSNメッセンジャーや携帯電話によってたびたび中断を余儀なくされ、なかなか思うように捗らない。
午前零時、クラスメイトたちからペーパーの進捗状況が刻一刻と伝えられ、同時に要求される状況報告にも対応しながら、何冊もの参考文献でいっぱいになっている勉強机でひたすらノートパソコンのキーボードを叩き続けていた。
「インド化されたチャンパ」
自分にまったく関心がない分野のペーパーを書くことほどイヤなことはない。みんなも東南アジアの古代文明には興味がないようで、ほぼ全員が頭を抱えながら厭々キーボードを叩き続けているようだ。ちなみに、クラスの大多数を占めるタイ人学生たちの専攻分野は、第1位が経営学、第2位が経済学、第3位が政治学の順となっている。