きょうは午前中の講座「東南アジア麻薬流通論」でラーチャブリー県へ行って、全部で12あるミャンマー領内へ通じるけもの道を調査してから、違法薬物の流入を阻止するための取り組みについて国境警察にヒアリングを行った。
午前6時半にヂュラーロンゴーン大学文学部の裏手にある通用口前に集合し、途中、ナコーンパトム県サームプラーンで給油のための休憩をとって、バンコクからおよそ192キロの離れているラーチャブリー県スワンプングへ向かった。
午前10時半、第13管区国境警察の139中隊司令部に到着した。この中隊司令部はタイとの外交関係が不安定なミャンマーと隣接している地域にあり、ミャンマー軍による侵攻を受けた場合にはここが最前線の司令部となる。兵員輸送車2台を備え、警察官170人からなる軽装歩兵部隊が駐留している。司令部で行われた簡単なブリーフィングでは、知りたいことの大半が国家の安全保障にかかわる機密事項として説明を拒まれた。ここで手に入れた情報は、ミャンマー政府軍や複数ある武装勢力(KNUカレン民族同盟、DKBA民主カイン仏教徒軍、KPFカレン民族平和軍)の友好関係や兵力配置と、侵攻が予測されるルートのふたつに限られた。
僕たち東南アジア研究科の学生たちを乗せた兵員輸送車は、ものすごい砂埃を上げながら山間の未舗装路を走り続けた。つぎの目的地である兵営の手前でクルマから降りて、そこから急な坂を息を切らしながら登っていくと美しい景色が広がっていた。周囲の山々よりも一際高いところにある兵営には「タイ最西端」と書かれた看板が建っており、ミャンマー側の前線部隊の様子が手に取るように分かる。兵営で用意された料理は並のタイ料理屋より美味しく、昼食をとりながら警察官から国境防衛に関する話を聞いていたところ、突然の大雨に見舞われて兵営の中へ駆け込んだ。
ポリエステル素材の帆布からできているダークグリーンのテントには、発射可能な状態になっている自動小銃がいくつも吊るされていた。その中で残りの昼食を平らげて山を下り、山麓の村で村民たちが直面しているさまざまな問題や麻薬の流通などについてヒアリングを行った。
午後10時に大学まで戻ってきて、タイ人の友人たちと焼酎を飲みに出かけた。