新しい彼女できる その2

ヂュラーロンゴーン大学の各学部が先月30日から前期の試験期間に入り、僕も毎日のように中央図書館に籠ってクラスメイトたちとタームペーパー(学期末小論文)を書くようになった。学外中心だった自分の行動範囲が学内へ移ったことで、人間関係にも大きな変化があった。これまで挨拶を交わすことすらなかったクラスメイトとも毎晩電話で話すようになったし、本来何の接点もないはずの学部生から中国語やフランス語の発音を教えてもらえるようになった。さらに授業の合間を縫って、気分転換の食事や映画館に出かけているうちに、学内の友人も徐々に増えていった。

そんなある日、僕は東南アジア研究科のクラスメイトから文学部のフランス語専攻の4年生、オームを紹介された。ヂュラーロンゴーン大学の文学部は、タイ人のあいだで「タイ国内随一のお嬢様学部」と言われている。彼女はバンコク北東部のラートプラーオ区にある新興住宅街で会社員の両親と暮らしており、家には両親が結婚する前から仕えている家政婦までいるという。

きょうから僕にとっての新たなバンコク生活が始まる。今回は育ちのよいタイ人とのつき合い方について学べたらよいと思う。

正午、文学部の前でオームと待ち合わせをして、サヤームスクウェアにある日本料理店 SAMURAI で昼食をとった。その後、ヂュラーロンゴーン大学の中央図書館へ行ったところ、オームが踵の部分が固定されていないサンダルを履いていたため、入口の改札係に入場を拒否されてしまった。ヂュラーロンゴーン大学では、制服を正しく着用することを学生に義務付けており、違反している学生は学内の施設に入場できない決まりになっている。中央図書館の入場ゲートには「制服を正しく着用していない学生の入場を禁ずる」と書かれているポスターが大きく張り出されていた。

「文学部にはこの程度の違反でいちいちうるさく言ってくる人なんかいなかったわ。このサンダル、可愛らしいお花も付いてるし、なかなかイケてるって思わない?」

オームは悪戯っぽく言ってふて腐れたが、オームの幼馴染で東南アジア研究科のクラスメイトが代わりの靴を持ってきてくれるまでの約3時間、僕たちは中央図書館前の大きな木の下にあるベンチで世間話をしながら時間をつぶした。その時の話の流れで僕はオームと付き合うことになった。

夕方、ヂュラーロンゴーン大学へやってきた自習仲間たちは、僕たちの「電撃交際」の話を聞いて仰天していた。友人たちとタイスキ屋 MK で夕食をとってから、スィーロム2街路にある珈琲屋 Coffee Society へ行って午前4時までタームペーパーを書き続けた。

ABOUTこの記事をかいた人

バンコク留学生日記の筆者。タイ国立チュラロンコーン大学文学部のタイ語集中講座、インテンシブタイ・プログラムを修了(2003年)。同大学の大学院で東南アジア学を専攻。文学修士(2006年)。現在は機械メーカーで労働組合の執行委員長を務めるかたわら、海外拠点向けの輸出貿易を担当。